当センターは、肺がんをはじめとする呼吸器腫瘍性疾患の診断・治療を目的に、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科、病理診断科の専門医が連携し、最善の診療体制を提供するために設立されました。
肺がんは、世界的に見てもがんによる死亡原因の第1位ですが、診断および治療技術は目覚ましい進歩を遂げています。診断においては、超音波内視鏡、PET/CT、高精度CTなどの導入により、精度が大きく向上しています。治療面では、胸腔鏡やロボットを用いた低侵襲手術、定位放射線療法や重粒子線治療などの高精度な放射線治療、さらに遺伝子を標的とした分子標的薬や、がん免疫を回復させる免疫チェックポイント阻害薬など、さまざまな選択肢が利用可能となっています。
これらの進化した診断・治療法を最大限に活用するには、診療科の垣根を越えた密接な連携が不可欠です。新しい機器や薬剤の導入だけでは不十分であり、患者さんの病状やご希望に応じて、短期間で効果的かつ身体への負担が少ない治療を提供するためには、医療従事者間の深い連携と、豊富な経験に基づいた繊細な「さじ加減」と「目利き」が重要です。これこそが、今回「呼吸器腫瘍センター」を立ち上げた最大の理由です。 これまで当院では、多くの新規薬剤や治療法の開発に関わり、企業・医師主導の治験も多数行ってきた実績があります。そのため、新しい試験的治療を受ける機会もご提供できます。 がん治療の専門集団として、また県内唯一の都道府県がん診療連携拠点病院として、患者さんとの対話を大切にしながら、最善の治療を提案・実践してまいります。セカンドオピニオンとしてのご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
私たちは、患者さんの症状やご希望に応じて、適切な手術を提供しています。当センターでは多くの手術実績があり、がんの病変を可能な限り取り除くことと、術後の生活の質に配慮した治療の両立を心がけ、患者さんと十分に相談し、術式を提案しています。
手術では、胸腔鏡やロボット支援手術といった低侵襲技術を積極的に活用し、患者さんの早期回復を目指しています。また、片肺全摘を回避するために、血管や気管支を切断して再接合する形成手術にも対応しています。
紹介元医療機関からのご依頼により、切除が難しいと判断された患者さんに対しても再評価の上で、手術を行った事例があります。また、局所進行肺がんに対しては、薬物治療を先に行ったうえで手術を行う「導入治療」も積極的に実施しています。
早期に発見された肺がんに対しては、より根治性の高い手術を選択するか、あるいは体への負担が少ない放射線治療や重粒子線治療を選ぶという選択肢があります。肺がん診療ガイドラインでは、根治が期待できる手術を第一選択としていますが、患者さんの身体的状況や社会的背景により、初めから放射線治療を希望される方も少なくありません。
私たちは、患者さんが納得したうえで治療を受けていただけるよう、呼吸器外科および放射線治療科の両方でご相談いただき、時間をかけて適切な治療法を一緒に考えていただける体制を整えています。
このように、複数の専門科が連携して治療方針を検討できるのも、がん専門施設ならではの大きな特徴のひとつです。
がんの治療成績は、近年著しく向上しています。その大きな要因の一つが、がんの遺伝子解析の進歩と、それに基づいた薬物療法の開発です。かつては画一的な薬物療法しか選択肢がありませんでしたが、現在では、得られた病理情報や遺伝子情報をもとに、個々の患者さんに適した新しい薬剤や治療法を組み合わせて治療を行うことが可能になっています。
こうした個別化医療の進展は、内科的治療にとどまらず、外科治療や放射線治療においても同様で、それぞれの治療法に適した薬物療法を組み合わせて行うことができるようになってきました。
当院では、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科(光子線・重粒子線)の専門医が、病理・遺伝子情報をもとにカンファレンスで密に連携し、ひとつのチームとして、各患者さんに適切な医療を提供できる体制を整えています。
がん診療は、医師だけで行うものではありません。さまざまな専門職がチームとなり、患者さん一人ひとりを支えています。看護師、とくにがん看護の専門資格を持つ認定看護師は、患者さんの身体的状態を第一に考えながら、心身のケアを行い、治療が適切に進むよう支援します。また、治療後の社会復帰に向けたサポートも担っています。薬剤師は、日常的に服用している薬と治療薬との飲み合わせを確認し、副作用のリスクを最小限に抑えるためのチェックを行います。処方された薬剤についての説明や、薬の量・服用のタイミングが現在の病状に適しているかどうかの確認も行っています。理学療法士、作業療法士、言語療法士により、治療や病気により低下した身体機能の回復を支援します。歩行訓練だけでなく、嚥下(飲み込み)や発声の訓練も重要な役割の一つです。栄養管理科(管理栄養士)は、患者さんの栄養状態や嚥下機能に応じた適切な栄養指導を行い、直接対話を通じて、より良い栄養環境を整えるお手伝いをします。放射線診断科技師は、安全かつ正確に画像検査が行えるよう機器の操作や補助を行います。放射線治療科技師や医学物理士は、放射線・重粒子線治療の計画立案から実施、さらには治療の品質管理までを担っています。臨床工学技士は、手術支援ロボット、内視鏡などの光学機器、その他の医療電子機器の管理・保守を担当し、安全で確実な診療の支えとなっています。
当院では、新たに開発された薬剤や治療法に関する多数の治験や臨床試験に、これまで積極的に参加してきました。そうした実績をもとに、多くの新しい治療法の保険収載に向けた取り組みにも貢献してきました。いわゆる「標準治療」は、こうした治験や臨床試験の結果から有効性・有用性が確認されたうえで確立されていきます。しかし、これらの新しい治療法は、すべての医療機関で受けられるわけではありません。新しい治療法には、必ずしもすべての患者さんに明確なメリットがあるとは限りませんが、従来の治療では効果が期待できない場合や、治療の選択肢が限られている患者さんにとっては、新薬や新たな治療法を試す貴重な機会となります。
私たちは、こうした新しい治療の「窓口」としての役割を果たすがん専門治療施設として、多くの臨床的実績を重ねてきたことに大きな誇りを持っています。
独自ホームページもありますので、そちらもご参照ください。
治療方法 |
治療方法の特長(メリット) |
胸腔鏡手術ロボット支援下手術 | 小さい傷で出血量も少ない負担の少ない手術で、早期の社会復帰が可能となりました |
気管支形成・血管形成術 | 極力肺を温存するために、病変を切除しつつ最大限に肺機能が残るように、片肺全摘を回避するように努めています |
放射線治療
(SBRT/IMRT) |
従来方法に比べ副作用を抑え、広範囲の病変にも対応が可能となっています> |
重粒子線治療 | 通常の放射線療法より、より副作用が少なく短期で終えられます(早期肺がんの一部は保険適応) 重粒子線治療施設 i-ROCK |
薬物療法 |
抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの薬物治療を、がん遺伝子情報をもとに、病状に応じて用います さまざまな試験治療(治験)へのアクセスもあります |
各ページより参照ください
・呼吸器内科 | 診断と薬物療法を行っています |
・呼吸器外科 |
手術療法を行っています |
・放射線治療科(光子線・重粒子線) | 放射線療法を行っています |
・病理診断科 |
がんの診断と遺伝子情報解析を行っています |
・初診 (予約後1週間以内) |
精密検査、治療必要性の判断 | 呼吸器内科、呼吸器外科 |
早急に各種検査で、お体の状況や、病変の進行状況の把握を行います。 必要時、気管支鏡やCTガイド下に生検診断を行います。 治療方針の決定には、患者さんやご家族にもご参加ください。 | ||
・手術 |
初診後2-4週、 もしくは確定診断後2週間以内 |
呼吸器外科 |
・放射線治療 |
初診後2-4週、 もしくは確定診断後2週間以内 |
放射線治療科 |
・重粒子線治療 |
初診後2-6週、 もしくは確定診断後4週間以内 |
放射線治療科 |
・薬物療法 |
初診後4週、 もしくは確定診断後2週間以内 |
呼吸器内科 |
・紹介予約制となっております。
※ 紹介状の宛名に「呼吸器腫瘍センター」とご記載ください。従来の呼吸器内科、呼吸器外科宛でも結構です。精密検査がおおよそ終わっていて、内科治療を検討しているのであれば呼吸器内科、外科治療を相談したい場合には呼吸器外科を指定してください。どちらの診療科を受診されても、遅滞なく進められるよう体制を整えてあります。
医療機関様は患者さんに 「紹介状 ・ 各種検査のコピー」をお渡しください。CT等の画像、病理標本がありましたら極力添付お願いいたします。事前に送っていただけますと、当日の流れがよりスムーズですので、ご協力をお願いします。
重粒子線治療をご希望の方も、上記と同じ流れになります。以下のページをご確認ください。
患者さんのご紹介について(重粒子線治療施設)
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