当センターには遺伝診療科が担当している遺伝カウンセリング外来があります。「遺伝カウンセリング」と聞いてピンと来る方はあまりいないのではないでしょうか?遺伝カウンセリングでは遺伝子や染色体が原因の体質や病気に対応しています。「遺伝子」等の用語が突然出てきて、“もう分からない…”と思われた方も最後まで読むとなんとなく分かると思いますので是非目を通してみてください。
当センターはがん専門病院なので、「遺伝的にがんになりやすい体質」について遺伝カウンセリング外来で対応しています。大まかにがんの5~10%は生まれつきの遺伝的な体質が発症に関係していると言われます。そして、そのような体質になる原因は「遺伝子」にあります。遺伝子はヒトの設計図ですが、遺伝子に「ちょっとした変化」を生まれつき持っていると病気になりやすい体質になることがあります。実はこの「ちょっとした変化」は誰でも持っていますし、この変化によって生き物は進化してきました。ですが、この変化の起きる場所がポイントです。遺伝子の働きに重要な場所に変化が起きると、働きがうまくいかなくなることがあります。これががんと関係する遺伝子で起こると、がんになりやすい体質となるのです。
一部の遺伝子ではがんになりやすい体質を持っているのか調べられるようになってきました。おそらく最も有名なのは米国の人気俳優 アンジェリーナ・ジョリーさんが公表して話題になった「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」です。体質を持っていると分かった場合は定期検査を念入りに行うことが勧められますが、体質を調べる前に知っておいていただきたいことがあります。
ここで取り上げているがんになりやすい体質は一生変わらない体質であり、血縁の方も同じ体質を持っている可能性があります。そのため体質を調べた結果によってどのようなことが想定されるのか事前に考えておくことをお勧めしています。そのためのサポートを行うのが遺伝カウンセリングです。
当センターの遺伝カウンセリング外来は、「遺伝的にがんになりやすい体質」が心配な方はどなたでも受診できます。予約方法は遺伝診療科のページをご覧ください。家系内の病歴を確認した上で、疑われる体質や診断された場合の対応、血縁の方にどのように関わるかなどをお話していきます。検査を受けるかどうかは受診後に考えていただいて問題ありません。また、受診した方の考えを尊重していきますので、検査を強く勧めることはしていません。体質を持っていると分かった後は各診療科と連携を取って対応していきます。
最近のがん医療では治療のために遺伝子の検査を受ける機会が増えています。その検査でがんになりやすい体質が疑われることがあり、これまでは「遺伝カウンセリング」→「遺伝子の検査」という順番だったのが、最近は「遺伝子の検査」→「遺伝カウンセリング」という方が増えています。時代とともに遺伝カウンセリング外来の役割も変化してきています。
遺伝診療科 羽田恵梨
コラムColumn
関連ページRelated page
ページガイド
サイトマップを開く