総長挨拶

神奈川県立がんセンター総長 古瀬 純司

神奈川県立がんセンターは、1963年に発足した神奈川県立成人病センターを前身とするがん専門病院です。悪性新生物、いわゆる「がん」は1981年以降40年以上連続でわが国の死因第一位であり、依然として罹患数は増え続けています。まさに、がんの克服は、日本のみならず全世界共通の大きな健康上の課題となっています。

神奈川県は900万人以上の人口を抱える大きな県です。当センターはそのがん医療の要となる重要な責任を持ち、都道府県がん診療連携拠点病院として最新のがん医療を提供しています。

神奈川県立がんセンターは、病院、臨床研究所、および事務局から構成されています。病院は各診療科に加え、重粒子線治療センターやがんゲノム診療センターなど最新のがん医療を提供しています。
診療科の垣根をなくし、各科緊密な連携の元、診断からロボット手術を含む外科治療、内視鏡治療、放射線治療、薬物療法など、個々の患者さんに最適な医療を提供します。
重粒子線治療は、通常の放射線治療では制御が難しいがん腫にも有効性と安全性が期待される治療です。最近では保険適用となるがん腫も増えています。同センターはひとりでも多くの患者さんにこの治療を提供できるよう進めています。
がん診療はゲノムに基づく個別化の時代になっています。当センターはがんゲノム医療拠点病院に指定され、多くの病院と連携し、最新のがんゲノム医療を進めています。
最近のがん薬物療法は、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬、そしてがん遺伝子解析に基づく新規薬剤など、大きく進歩しています。当センターでは、新規薬剤を中心とする治療開発を積極的に行うべく新規治療開発支援センターも発足させています。

臨床研究所は、がんの分子生物学の解明、予防疫学、さらに最新の免疫療法など現在から将来を見据えたがんの臨床研究を推進しています。特に病院部門との連携を緊密にし、常に実際の臨床に反映される研究成果を挙げることを目標としています。

事務局は、病院や研究所の機能が円滑に進むべく務めています。また神奈川県内外の医療機関や研究機関との連携を積極的に推し進めています。

わが国は超高齢化が進み、患者さんの生活スタイルや価値観は大きく多様化しています。患者さんの様々な思いを尊重したきめ細かいがん診療が求められています。そのためには医療者の意識も変えていく必要があります。一方、複雑化するがん診療の中でより効率的な診療が求められています。そのためには優れた医療人の育成を行い、働き方改革をより進めることで業務の効率化をはかり、また県内・近隣のがん診療ネットワークをより緊密なものにするよう努めてまいります。

がんの克服は、治癒を目指すだけではありません。患者さん、ご家族だけでなく、一般の皆さまに、がんについてもっと知っていただく取り組みも必要です。がんといかに付き合うか、病気をうまくコントロールしてできるだけ通常の生活をおくる、そのようなサポートも重要です。当センターでは、患者さんや一般の皆さまを中心とした医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士、などなど、多職種チームによる多方面のサポートを実施しています。初診から在宅療養まで切れ目のない患者さんへの支援を行うべく、さらによりよい体制の構築や地域連携を推し進めます。

これらの多くの使命を果たし、個々の患者さんにとって最適な質の高い医療を提供するため、医療安全の強化と適切な診療体制の推進を全職員が一丸となって取り組んでいます。
みなさまの温かいご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

神奈川県立がんセンター総長 古瀬 純司

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