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肺がんとは・・・?

 日本では肺がんの発症数と死亡数がここ数十年間で激増しています。その原因としてこれまでの喫煙率の高さと人口の高齢化があります。英国では喫煙率が減少することに20年遅れて肺がんの発症数や死亡数の減少(正確には年齢調整死亡率:各国で人口構成に違いがあり、それを一定の年齢構成に直して死亡率を計算しなおすことで、各国の比較をすることができる)が見られています。米国でも男性では喫煙率はピークが過ぎて減少傾向に入り、それに約20年遅れて肺がんの発症数や死亡数の減少が見られています。しかし、日本では、欧米に比べて肺がんの年齢調整死亡率は低く経過しているのですが、過去40年以上の間、男性では高い喫煙率が続いてきており(70%台)、ここ数年は40%を割ったとされていますが、以前の高かった喫煙率の影響は今後も20年以上は続くことが予想されることから、肺がんの発症数や死亡数はまだ増加することが考えられます。また、肺がんの発症年齢は60歳台以降が多いのですが、50歳台以降から増加し始め、70歳以上の高齢者でも多く見られ、今後この発症年齢層に当たる人口の増加が確実であることからも、肺がんの発症数と死亡数は増加すると考えられています。今から10年後の肺がん死亡数は2005年の倍になるという予測がなされているほどです。2007年5月に公表された厚生労働省研究班の結果、喫煙で40歳以降の余命が3.5年短くなること、禁煙した人の余命は非喫煙者と喫煙者の中間であることが明らかにされ、非喫煙、禁煙の重要性があらためて示されました。近年では、男性の喫煙率は低下してきていますが、一方女性の喫煙率は全体では男性に比べて低いのですが、毎年ほぼ一定のレベルで推移し、若年者の喫煙の増加傾向が報告されています。このように全体として若年者、特に未成年の喫煙率の増加は、いまだ身体が未熟の段階でもあり、肺がんの発症数増加に大きく影響するのではないかと予想されています。

肺がんはどのようにして発見されるか?

 肺がんの発見動機には検診による場合、自覚症状により発見される場合、そして他疾患観察中に発見されるという大きく3つの場合があります。
 検診には、職場で行われる職場検診、市町村が主体となって行う住民検診、老人保健法に基づく老人健診、自費負担で行う人間ドックなどがあります。肺がんにおける検診の意義については、世界的に見ても否定的な見解が多いのですが、自覚症状発見例に比べると、検診発見例の方が明らかに早期の肺がんが多く発見できます。最近はドックなどで胸部CT画像を使った検診(いわゆるCT検診)が始められており、通常の胸部X線写真では発見できない小さな早期肺がんが多く見つかっています。
 自覚症状発見は、咳や痰、血痰、胸痛、息切れなどの自覚症状で発見されるものですが、症状が出てくるまでにはかなりの時間が経過しており、検診発見例に比べると進行例が多くなり、したがって手術可能な例も少なくなってしまいます。しかし、肺門型の早期肺がんは胸部X線写真や胸部CTでは発見できず、喀痰細胞診で発見可能であり、手術だけでなくレーザー照射でも治癒する可能性があります。
 他疾患観察中の発見とは、たとえば風邪をひいて胸部X線写真を撮ったり、胃のX線撮影をしたり、あるいは腹部のCTを撮ったときに、たまたま撮影フィルムに肺の異常影が写っていて、それが発見の端緒となる場合です。概して、肺がんによる自覚症状がないので、検診発見と同程度に早期の肺がんが発見される可能性があります。

呼吸器科の受診に際して

 がんセンターは、全科紹介予約制になっております。
 このため、受診される方は、かかりつけ医師や現在診療を受けている医療機関の医師から紹介状をいただいたうえ、電話で受診日を予約してからご来院ください。

 受付窓口:045-520-2210(患者支援センター患者支援室 初診予約受付)
 受付時間:月曜日から金曜日 8時30から17時15分

スタッフ紹介

診療医師名 認定資格
医療技術部長(兼)呼吸器内科部長
 山田 耕三
 長崎大学医学部 昭和58年卒
日本内科学会 認定内科医・指導医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会 暫定指導医
日本がん治療機構がん治療暫定指導医
呼吸器内科医長
 齋藤 春洋
 横浜市立大学医学部 昭和和63年卒
 横浜市立大学大学院 平成8年修
日本内科学会 認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医
日本感染症学会 ICD
日本癌治療認定医機構 がん治療認定医
呼吸器内科医長
 加藤 晃史
 京都大学医学部 平成3年卒業
日本内科学会 総合内科専門医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本癌治療認定機構 がん治療認定医
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医
呼吸器内科医長
 近藤 哲郎
 島根医科大学 平成8年卒
日本内科学会 認定内科医
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
日本呼吸器内視鏡学会 認定医
日本癌治療認定医機構 がん治療認定医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
呼吸器内科医長
 村上 修司
 横浜市立大学医学部 平成14年卒
 横浜市立大学大学院 平成20年修
日本内科学会 認定内科医
日本感染症学会 ICD
日本癌治療認定医機構 がん治療認定医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
呼吸器内科医師
 佐多 将史
 鹿児島大学医学部 平成16年卒
日本内科学会 認定内科医・指導医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 専門医
日本癌治療認定医機構 がん治療認定医
呼吸器内科医師
 高橋 亮
 東海大学医学部 平成17年卒
 
呼吸器内科医師
 間邊 早紀
 群馬大学医学部医学科 平成21年卒
日本内科学会 認定内科医
呼吸器内科医師
 仁藤 まどか
 東海大学医学部 平成24年卒業
 
 
 
副院長(兼)診療施設管理部長
 中山 治彦
 群馬大学医学部 昭和57年卒
日本外科学会 外科専門医・指導医
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科指導医
呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医
日本胸部外科学会指導医
 
呼吸器外科部長
 伊藤 宏之
 横浜市立大学医学部 平成5年卒
日本外科学会 外科専門医・指導医
呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医
日本外科感染症学会 ICD
日本胸部外科学会認定医
呼吸器外科医長
 西井 鉄平
 愛媛大学医学部 平成12年卒
日本外科学会 外科専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医
呼吸器外科医長
 鮫島 譲司
 横浜市立大学医学部 平成16年卒
日本外科学会 外科専門医
呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
呼吸器外科医師
 大澤 潤一郎
 東京医科大学 平成22年卒
 
呼吸器外科医師
 橋本 昌憲
 獨協医科大学 平成20年卒
日本外科学会 外科専門医
呼吸器外科医師
 和田 篤史
 東海大学医学部 平成24年卒
 

(更新日:2016.6.1)

肺がんの診療の最前線

 肺がんの標準的治療は病期別に分けられています。以下の内容は現状最新のガイドラインに基づいています。

  1. 手術療法
     比較的早期のI~IIIA期の一部に対して手術が用いられます。肺がん病巣がある肺葉(右肺は上葉・中葉・下葉の三つ、左肺は上葉・下葉の二つあります)を切除するのが標準術式とされています。さらに肺の付け根(肺門)や心臓の周囲にある(縦隔)リンパ節を切除(郭清)し、転移の可能性のあるがん細胞を極力切除し、かつ正確ながんの進行度を評価する目的で行います。小型でより早期の肺癌に対しては、より切除範囲を少なくする術式が用いられることもありますし、患者さんの体の状況やがんの進み具合も切除範囲を増減することもあります。また手術の際に胸腔鏡という胸の中をのぞき込むカメラが用いられることが多くなり、手術に携わる複数の人間が術野を見られることで、以前に比し安全性が増しているといえます。さらに肺の縁にある病変に対しては、胸腔鏡と小切開創のみを用いて手術を行う胸腔鏡下手術も増えてきており、安全性を増しつつ体に負担の掛からない術式が全国的に導入されています。
     IIIA期の進行肺癌に対しては、最初から手術を行うのではなく、抗がん剤や抗がん剤と放射線を組み合わせた導入(放射線)化学療法を行い、効果を確認してから切除を行う場合もあります。また当初進行肺癌として手術以外の治療法が選択された場合でも、治療効果で病変が小さくなった場合には切除を行う、サルベージ手術を行うこともあります。
  2. 放射線療法
     リニアック、コバルト60、マイクロトロンなどによる治療であり、放射線ががん細胞に直接作用して、分裂を妨げ、死に至らしめることになります。がんの周囲の血管に炎症を起こして(血管炎)、血流が途絶することでも効果が生じ、照射された部位では、化学療法よりも効果は高いとされています。しかし腫瘍の周囲の正常組織にも放射線が照射されるので、有害な副作用として食道炎や肺臓炎、皮膚炎などがほとんどの場合に生じます。これらの副作用が生ずることは避けられないのですが、通常は受容可能です。最近ではCT画像から肺がんの立体的形状が把握できるので、それにあわせて放射線治療を行うという方法が主体になっています。また定位照射や重粒子線、サイバーナイフなどピンポイントに治療できる新しい手段も開発されています。
  3. 化学療法とは
     抗がん剤による治療で、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来物質などがあります。がん細胞に抗がん剤が取り込まれて、効果が生ずるとがん細胞は死にいたることになります。しかし抗がん剤は正常細胞にも取り込まれるので、その場合は正常な働きがそこなわれるために、副作用が生じてきます。骨髄細胞や消化管の粘膜細胞、毛根細胞などで副作用が生ずるとそれぞれ骨髄障害(白血球減少、貧血、血小板減少)、悪心・嘔吐・下痢・便秘・食欲低下、脱毛などが出現します。また、アレルギーおよび抗がん剤の直接障害としての内臓機能障害が数~10%程度起こる場合もあります。効果も有害事象も個人差があり、このバランスの上で治療が成り立つか中止するか、ということになります。ただし、抗がん作用と有害事象の程度は相関するものではありません。
  4. 臨床試験とは?
     現在行われている進行肺がんに対する標準的治療法はこれまでの数多くの臨床試験の結果に基づいて確立されてきた治療法です。新しい切除法や抗がん剤の登場などにより少しずつその成績は改善されてきていますが、まだその効果は満足できるようなものではありません。少しでも治療成績の改善を目指して、行われるのが臨床試験です。臨床試験には、新しい治療法の開発を目指し、これまでに行なわれていない治療法、薬剤等が安全に使用できるか、効き目はあるかを確かめるものと、現時点での標準的治療法を行った場合と、より良い結果を期待して作られた新しい治療法とを効果と副作用を比較することにより、より良い治療を確かめるものがあります。もちろん、治療とは言いながらも試験的あるいは研究的な側面があり、またその新しい治療法が果たして本当に意味のあるものなのかどうか、まだわからないことがあり、それを確かめるのが臨床試験であるということです。したがって、その治療法の妥当性、科学性そして倫理性が保たれることが絶対に必要なことです。そのどれかが損なわれたら、その臨床試験は成り立ちません。当施設は、がんの治療成績の向上を目指していくつもの臨床試験を行っている施設です。そこで、該当する試験治療法があった場合には、そのことについても患者さんやご家族に説明させていただくことがあり、そしてそれに参加していただけるかどうかをおたずねすることがあります。もちろん、その試験治療は参加していただく患者さんの同意をいただいた上で行われることになりますし、その試験に参加した後でその試験から降りたいというお申し出があったら、即座に中止しなければなりません。またそのことによって患者さんに不利益が及ぶことは全体にないようにしなければなりません。あくまでも患者さんのご承諾をいただいた上でこれらの試験を行うことになっています。
  5. がんセンターの現状
     当施設には毎年の新たな肺がん患者さんは700~800人前後受診されています。数は多くないですが、最近各種の報道で有名になっているアスベスト(石綿)の吸入による呼吸器疾患(悪性中皮腫やアスベストに合併した肺がん)も受診されています。 肺がんはそのおよそ35%が手術可能な方であり、約50%方が化学療法や放射線療法の適応のある方で、残りはいずれの治療法の適応にもならず、最良支持療法や無治療観察、あるいは治療拒否やセカンドオピニオンの方などとなっています。この他に、胸腺腫、縦隔腫瘍、前記した悪性胸膜中皮腫、転移性肺腫瘍等の患者さんがおられます。
     いずれの疾患についても、その診断と治療を担当しています。診断は内科グループがCT画像、PET-CT画像を主体に、それに気管支鏡も行っています。特に、マルチスライスCTによる末梢小型肺がんの画像診断にはすぐれたものがあり、CT装置を稼動させている各地の病院・医院や検診施設と提携して、数多くの早期がんを発見し、また厚生労働省の研究班員として診断能の向上に向けての研究を行っています。検査件数は胸部CT(全例64列~320列マルチスライスCTを用いて)が約2000件以上、気管支鏡は超音波内視鏡も含めその件数は年間約300件以上です。
     多くの地域医師会と連携して、X線読影会や二重読影により、肺がんの早期発見に努めており、実際多くの早期肺がんが見つかっています。
     治療は、原則として最新のガイドラインに基づいた標準治療を行いますが、非小細胞肺がんではⅠ期からⅢA期の一部までは手術療法が、ⅢA期には、化学療法と手術療法または放射線療法が、ⅢB期の一部には化学療法+放射線療法が、Ⅳ期には化学療法または最良支持療法のみが行われます。小細胞肺がんでは、進行がかなり早いので手術が可能な患者さんは少なくⅠ期のごく少数例で手術が行われるほかは、限局型(局所進展)では化学療法+放射線療法が、進展型(遠隔転移)では化学療法が積極的に行われます。
     切除可能の患者さんでの手術は外科グループが担当し、より質の高いレベルの手術や安全な手術を目標としています。これを実現するために、クリニカルパスを適応し、より安全で体に負担をかけない傷を少なくした胸腔鏡併用の手術を行っています。
     総手術件数および原発性肺がん根治術件数は2012年:総件数341件(うち肺癌根治術252件)、2013年(病院移転にて3週間手術休止):総件数326件(同228件)、2014年:総件数404件(同278件)と増加傾向にあります。
     原発性肺がんの手術件数は全国でも有数の施設となっておりますが,転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍などの肺・縦隔の腫瘍切除術も積極的に行っております。
     最近10年間の肺がん切除例の5年生存率は、がんが肺内にとどまってリンパ節転移がみられないⅠ期では81%、肺門リンパ節に転移のあるⅡ期では52%となっています。縦隔リンパ節に転移のある症例の手術適応については議論のあるところですが、ⅢA期の切除成績は30%台となっています。手術の内容は、がんの広がりに応じて、大血管などの合併切除を含む拡大手術から、いわゆる早期肺がんに対する縮小手術まで多岐にわたっています。手術単独では治癒の可能性が低い局所進行がんに対しては、術前化学療法(+放射線治療)を導入し、治療成績のさらなる向上に努めています。この治療法は従来の手術単独の切除成績を凌駕する成績が期待されていますが、手術手技だけでなく、術後の管理にも高度の知識と技術が要求されます。そして、なにより内科と外科の密接な連携が欠かせません。一方、特に早期の小型肺がんに対しては、より小さな傷で切除ができる胸腔鏡手術も含めた縮小手術を積極的に行っています。
     当呼吸器外科で手術の対象となる疾患は肺がんだけでなく、悪性中皮腫、転移性肺腫瘍や縦隔腫瘍など様々です。したがって、手術の内容も広範多岐にわたります。手術に関する皆さまの知識・疑問点にすこしでもお役に立てるよう、呼吸器グループ独自のホームページ上で肺がん診療について細かく説明を加えていますので、そちらもご参照ください。  呼吸器内科では抗がん剤をほぼ全員に施行しておりますが、有名なシスプラチンを主体にイリノテカン、ドセタキセルのほかに、ビノレルビン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ノギテカン、アムルビシン、アリムタ、TS-1等の新しい抗がん剤の使用が認可され、さらには分子標的薬であるアバスチンの抗がん剤との併用も積極的に試行しています。したがって、現在では肺癌の組織型別の抗がん剤の選択を行い、さらなる治療効果向上が目指しています。それらを用いた臨床試験も全国規模で行われ、我々の施設も積極的に参加しています。その中で進展型小細胞肺がんに関する厚生労働省研究班で行った多施設共同臨床試験の結果が世界的な一流医学雑誌に掲載され、シスプラチン+イリノテカンの併用療法がこれまでの標準療法に比較して有意に生存の延長が見られたというものであり、今後の小細胞肺がんにおける標準的治療法が変わるということで注目されました。また非小細胞肺がんでは、分子標的薬が注目されるようになりました。ゲフィチニブ(イレッサ)が2002年に、エルロチニブ(タルセバ)が2008年に認可され、昨年はアファチニブ(ジオトリフ)が認可され、これらはEGFR-TKIと呼ばれ切除不能の進行肺がん患者さんに使って劇的な効果が見られています。またALK阻害剤であるクリゾチニブ(ザーコリ)、アレクチニブ(アレセンサ)も臨床応用が可能になりました。分子標的薬は従来の抗がん剤とは異なり、薬によって起こる間質性肺炎の問題が一時期、新聞やテレビで指摘されました。日本肺癌学会ではこれらの分子標的薬の安全な使い方についてガイドラインが出されており、それに基づいて安全な使用が国内では行われています。また、分子標的薬を使った治療は分子標的治療と呼ばれ、従来の抗がん剤とは違い、肺がん細胞を狙い討ちできる薬剤の1つであり、肺がん細胞の遺伝子の状態の違いから、EGFR-TKIやALK阻害剤の有効な方と効果が望めない方の違いが判別できる方法が確立しております。我々は検査科と協力し、非小細胞肺がん患者さんの分子標的薬の有効性の判定が出来る体制をとっており、近年推進されてきている、オーダーメイド治療の臨床応用も実施しております。抗がん剤が有効な高齢の患者さんも増加していますが、抗がん剤が有効な高齢の患者さんも増加していますが、抗がん剤よりも先にこの分子標的薬を行う方が、生存の延長に有効であるとの報告が世界的にも示されており、今後いつの段階で分子標的薬を使い、通常の抗がん剤をどの段階で使うかが、当面の検討課題と考えられています。とにかく全身状態などが適切な患者さんに対しては積極的に抗がん剤や分子標的薬を組織型やがんの遺伝子変異に合わせて施行しています。また、肺がん術後に補助化学療法や術後再発した患者さんについても外科から内科に回ってもらい積極的に化学療法を行っています。
     有害な副作用対策も進歩してきていますが、全身状態が良くなくて積極的な化学療法を行うことにより、むしろ病状が悪化してしまうとか、かえって大きなリスクを招くことが予想される患者さんでは、疼痛緩和や呼吸困難の改善、全身状態の改善などの症状緩和ケアをお奨めしています。当施設の緩和ケア科や、緩和ケアに精通した近隣の病院や施設、地域の医師会の在宅医療の先生方とも病々連携のもとに、新しい鎮痛薬や向精神薬などを用いることにより、苦痛の軽減をはかるようにしています。
     いずれの治療法を行うにしても、患者さんの希望を確認し、原則として病名を告知し、病状や治療について十分に説明をさせていただき、理解を深めてもらった上で、治療に関する合意をいただくようにしています(いわゆるインフォームド・コンセント)。

肺がんについての豆知識

 肺がんの特徴について、肺がんの発生部位別(表1)、組織型別(表2)、病期別(表3)に分けて示しました。
 肺がんであった場合には、それが肺のどこの部位に発生したものか、そしてその肺がんの組織型が小細胞がんなのか、それとも腺癌や扁平上皮癌などの非小細胞がんなのかをしらべる必要があり、あわせてその肺がんが限局しているのか、それとも他臓器への転移や胸水貯留を伴っているか、あるいは心臓や大血管、リンパ節、神経、肋骨や筋肉などの胸壁などとの関係がどうなっているか、をあわせて検査する必要があります。これらの所見の有無により、治療法が大きく異なってきます。
 通常は腫瘍の程度や局在(T:tumor)、リンパ節の転移の仕方(N:node)、遠隔転移の有無(M:metastasis)により、肺がんの進行度が分類され(TNM分類)、臨床病期が決定されます。それに基づいて治療方針がおおまかに決められており、この方針は原則として日本国内や米国やヨーロッパで2010年以降統一した基準で行われるようになりました。

表1.発生部位別特徴(肺門型と肺野型)

  肺門型 肺野型
症状 気道刺激症状(咳・痰・血痰など)を伴うことが多い 気道刺激症状はほとんどない進行がんではある(胸水→息切れ)
性差 男性にきわめて多い 女性にもよくみられる(男=女)
たばこ 喫煙との関連性が強い 喫煙との関連性がある
職業 重金属・石綿取扱い歴、鉱山労働等 関連性はない
組織型 扁平上皮がん・小細胞がんが主 腺がんが多い、扁平上皮がんもある
胸部X線所見 初期では陰影なしかあっても肺炎像進行すれば腫瘤を呈する ごく早期では見えない。増大すると陰影が見える(15mm以上)
発見手法 喀痰細胞診、胸部X線写真 胸部X線写真、胸部CT
発見動機 自覚症状発見が多い、他疾患観察中発見もある 検診発見が多い、他疾患観察中発見も。進行すれば自覚症状あり
その他 高危険群(40歳以上、男性、喫煙者、職歴、気道刺激症状、家族歴) はっきりとした高危険因子は定まっていないが、男性では喫煙との関係が疑われている

表2.組織型別特徴

  腺がん 扁平上皮がん 小細胞がん
頻度 50%以上 30%前後 15%
性差 男性だけでなく、女性にもある 男性に多い 男性に多い
喫煙 非喫煙者にもある 喫煙者に多い 喫煙者に多い
職歴 関係はない 関係ある 関係ある
発生部位 肺野に多い 肺門に多い 肺野・肺門の両方
発見動機 検診発見が多い 自覚症状発見多い 自覚症状発見多い
症状 初期では症状ない。進行すると症状あり 自覚症状がある(咳、痰、血痰等) 症状は急速に出現し、進行が早い
治療法 早期例は手術、進行例は放射線・化学療法 早期例は手術、レーザー治療、進行例は放射線・化学療法 限局例は放射線・化学療法、進展例は化学療法

表3.新病期別分類

  概要 新病期別分類
O期 病変が見えない
I期 リンパ節転移がない、遠隔転移がない
II期 肺門リンパ節転移がある、遠隔転移はない
III期 縦隔リンパ節まで転移がある、遠隔転移はない
IV期 遠隔転移あり、または複数の肺葉の腫瘍結節がある

アスベスト関連疾患

 最近各種の報道で有名になっているアスベスト(石綿)の吸入による呼吸器疾患が社会問題になっています。これらの疾患の多くは長期の経過でゆっくり進行することが多いとされています。現在特に問題となっているものは、悪性胸膜中皮腫とアスベスト関連疾患に合併する肺がんです。中には肺がんなどが発生しなくても、長期に塵肺と同じ性格を有する石綿による呼吸不全を呈することもあります。
 アスベスト関連肺がんはすでに述べた肺がんと同じ取扱いをし、治療方針も同じ考え方ですが、悪性中皮腫はその性格が多少肺がんとは異なりますので、以下に解説します。
 悪性胸膜中皮腫は主にアスベスト吸入により、肺の表面を覆う胸膜が20~30年以上の長期の経過で腫瘍化し、胸水の貯留や全身へ転移する悪性腫瘍です。したがって、胸膜から発生した「ゆっくり発生したがん」と考えてもよいものです。中にはアスベストとは明らかに関連が証明されない中皮腫例もあります。
 その症状は胸水の貯留とそれに伴う呼吸困難感、胸部の圧迫症状、胸膜や肋骨、神経に浸潤することでの疼痛、しびれなどが主なものです。症状が出て発見されることが多く、肺がんと異なり、検診によって見つかることは少ないです。また、その診断は肺がんよりは難しく、手術により診断されることも稀ではありません。治療は肺がんと同じく、手術や抗がん剤による全身療法であり、考え方はほぼ肺がん治療と同じですが、水がたまって見つかるケースが多いので、手術ができるケースは非常に少ないです。全身状態が不良なことも多く、緩和療法のみ行うこともあります。

肺がんになったら?

 検診や日常診療で胸部写真に"かげがある"といわれたら、肺がんの専門医のいる病院ですみやかに精密検査を受けてください。自覚症状がないからといって放置してはいけません。早期発見と早期治療はがんの診療においては大変重要なことです。また肺がんの手術はどこの病院でも同じようにできるわけではありません。手術症例数や化学療法例数が多く、経験豊富な専門医のいる施設や病院への受診をお薦めします。肺がんの診断や治療はまだまだ100%完成したものではありません。しかし日常の診療を通じて新たなきっかけから、さらに向上していくものです。わからないところがあれば担当医に質問してください。なお最近は、他の施設で診断や治療を受けたあとに当施設を受診して、今後の治療についてどうすればよいのかというセカンドオピニオンの患者さんが増えています。その場合は、担当医の紹介状やX線・CTなどがあれば、可能な限り、今後の方針について適切なアドバイスができますので、相談してください。担当医紹介コーナーに当センター呼吸器内科・外科のスタッフのかかわっている専門学会を掲載しています。
 何より大事なことは、たばこを吸わないこと(禁煙)です。禁煙することで肺がんだけでなく、食道がんや喉頭がんなど喫煙に関連するがんの発症リスクを減らすことができます。また、狭心症・心筋梗塞などの心疾患や脳出血・脳梗塞などの脳血管疾患は動脈硬化が原因で発症するのですが、たばこ煙のニコチンが体内に長期間入り続けると動脈硬化が促進され、脳・心血管疾患の誘因になるとされています。病気になってからの治療では医療費がかさみます。国の財政にはたばこに関連する税金が寄与していますが、国などが負担する医療費はそれを大きく上回っていると報告されています。21世紀は予防医学の時代です。禁煙は重要であり、病気にならない努力は払うべきことです。
 日本で売られているタバコの包装紙には肺がん・心筋梗塞・脳卒中・肺気腫・妊娠への影響・受動喫煙・ニコチン依存・未成年者の喫煙の8種類の病態について、主要な2面へそれぞれ30%以上の面積を使って表示するという財務省令が施行されました。自分の健康は自分で守る、という時代なのです。「吸いすぎに注意」ではなく「吸わないこと」が求められています。2006年4月以降、「ニコチン依存症管理料」との名目で、禁煙に伴うカウンセリングや検査が保険で認められ、皮膚に張ったパッチからニコチンをゆっくり吸収させて禁断症状を和らげる、ニコチンパッチも保険適応となっています。県立がんセンターでは、2007年4月以降、禁煙指導を積極的に行い、木曜日に禁煙外来を開設また近隣施設の禁煙外来との連携も行っています。
 次に治療に入る際には、自分の組織型が決まり、病期が決まったとして重要な点は、治療を受ける患者さんがどの程度元気であるかということと、内臓(心臓、肺、肝臓、腎臓、骨髄など)の働きが治療に耐えられるものであるかどうかということが、もっとも重要な点です。つまりどのくらい治療に耐えられるかということです。肺がんの主な治療方法には、既に述べたように手術療法、放射線療法、化学療法がありますが、そのいずれもが多かれ少なかれ、合併症や副作用を伴うものです。肺がん患者さんは高齢の方も多く、なかには80代の方もおられます。医学用語ではPerformance Status (PS)といいますが、肺がんによる症状のためにどのくらい日常生活に支障をきたしているか、それが大きいほど治療を行なう際に支障をきたしたり、治療をしたためにかえって日常生活が損なわれたりするので、そういう状況は避けなければなりません。PSにより、治療の方法や抗がん剤の使用を変更する必要があります。内臓機能の働きがよくないと治療に耐えられないと判断しなければならないことがあります。これらの評価をした上で最終的な治療方針が決められることになります。なお、20年以上前から肺がんの免疫療法の開発、研究がなされていますが、いまだ臨床的に抗腫瘍効果があることが科学的に証明されたものはなく、この分野は今後も永遠テーマ=「研究段階の領域」といえます。

たばこについて

 たばこと肺がん発生の関係については、興味深い事実が指摘されています。肺がんの組織型は、以前は肺門型の扁平上皮がん多く見られたのですが、最近では末梢型の腺がんが増加しています。これが実は、たばこの変遷とそれによる喫煙動作の変化に関係があるというのです。
 すなわち、昔のたばこはフィルターもなく(両切りたばこ)、またタール成分やニコチン含量が多いのでした。たいていの人のたばこ1本を吸う場合の吸煙動作は、深くは肺内に吸い込まず、また吸う回数も少なく、くゆらすというものでした。フィルターがないのでたばこ煙中には粒子成分が多くなり、その粒子は肺の中まで吸い込まれずに気管や太い気管支(肺門)に浮遊して、その付近の粘膜に付着しやすくなるというもので、その粒子にはタールなどの発がん物質が多く付着しており、したがって結果として肺門付近の粘膜に長期間暴露されて付着し続けることにより、肺門に肺がんが発生するようになります。その組織型は扁平上皮がんが多く見られます。これは世界ではじめて人工的にウサギの耳に扁平上皮がんを発生させた日本人の市川・山極先生の実験どおりの発がん過程をたどるものでした。
 しかし最近のたばこは、健康志向ということで低タール・低ニコチン化され、したがって「軽い(マイルドな)」たばことなってきました。そのために、たばこ1本あたりの吸煙動作を見ますと、以前ならば、ゆっくりと、くゆらすように浅く、そして回数も少ないというものが、大きく、深く、回数も多く吸うようになってきています。またほとんどがフィルター付きとなり、粒子成分がフィルターに引っかかって吸入されにくくなり、これに付着した発がん物質は吸入されにくくなったのですが、ガス成分は吸着されないので、大きく深く吸うこともあって肺の末梢まで入り込むようになりました。またフィルターには小さな穴が開けられており、そこから空気を一緒に吸い込むことになるので、たばこ煙は希釈されて、肺野末梢まで吸い込まれることになります。このことからガス成分に含まれている有害な発がん物質が肺の末梢に作用し、結果として肺野末梢に肺がんが多く発生してきていることにつながっていると考えられています。
 さて、たばこ煙の中のタールやニコチンの測定法は世界的に決まった方法があります。火をつけたたばこを測定機器に取り付けて、1回35mlの吸入で1分間に2回吸入し、それを5分間行うというもので、その吸入気中のそれぞれの物質の濃度を測定します。この設定条件は昔のたばこ吸煙動作の様式なのですが、最近のライト化、低タール低ニコチン化・フィルターつきたばこの中にあっては、先に言いましたように、大きく深く数多く吸うことが主流になっています。この設定された機械式吸入でのたばこ煙中のタールやニコチンの濃度はいずれも低くなり、またフィルターにあけられた小さな穴から空気が入り込むので、まさしくうたい文句どおりに濃度が低くなるという結果が示されているわけです。しかし、現在の多くの人での実際の喫煙の仕方では、低濃度であっても、吸入の大きさや回数が増えることから、決して健康によいということにはなりません。
 また火のついたたばこの切先から上がる青い煙(副流煙)には多くの有害物質が含まれており、それが発がんにかかわることも報告されています。いわゆる受動喫煙であり、女性の肺がん、特に腺がんが大きく増加していることには、この副流煙が関係していると考えられています。
 実際、最近の肺がんの組織型の変遷を見ると、日本だけでなく、英国や米国でも、肺門部に発生する扁平上皮がんよりも、肺野末梢部に発生する腺がんの発生が増加しています。フランスでは最近までフィルターなしのたばこが多かったので扁平上皮がんがまだ多く見られています。
・・・やはり、タバコは百害あって一理なしといえます!

肺がん検診について

 20年前に米国では胸部X線写真による肺がん検診では肺がんの発見には寄与したが、肺がんによる死亡は減らなかったという大規模な臨床試験の結果から、肺がん検診は意味がないとされ、それが今日まで世界的なコンセンサス=結論となっていました。日本でも数年前の厚生労働省の研究班の報告では、肺がんにおける胸部X線による集団検診の効果はないという結論が下されています。検診の手段としての胸部X線写真では骨や心臓・血管などに重なって異常影を見落とすことがしばしばあり、また大きさが15mm以下の腫瘍は指摘しにくいことから、たしかに胸部X線写真による検診の有用性については問題があると考えられます。つまり、手術可能な肺がんを発見できる可能性があるのですが、見落としやX線写真上で指摘できない例も多いということです。しかし、きちんと検診の精度管理をすることにより、胸部X線写真だけによる検診においても有効性が証明されたという報告も、神奈川県下の市医師会グループの研究で報告されています。最近の動きとしては、胸部CTの普及にともない、胸部X線写真では発見できないような15mm以下の小さな末梢型の早期肺がんが多く見つかるようになってきました。実際、このような小型の肺がんの予後は良好であり、今後は肺がんのCT検診の有用性について検討していかなければなりません。米国では大規模な臨床試験が行われ、肺がんのCT検診が死亡率を減らす可能性の報告が昨年秋に出たばかりです。また、国内においてもCT検診の検証がなされつつあります。
 しかし、日本では検診に関する財政的裏づけが、平成10年から一般財源化され、各自治体(市町村)が主体性を持って検診を運営していくことになっています。またこの一般財源化に伴い、受診者にも自己負担分が生ずるようになっており、自治体によっては取り組み方が異なってきており、肺がん検診の意義が低いことや肺がん検診の受診率が極端に低下したことから、肺がん検診をなくした自治体もあります。

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