診療科・各部門のご案内
骨軟部腫瘍外科2020年7月更新

特色

1.はじめに-  受診に際して不安なこと

 担当の医師からがんセンターの受診を勧められると非常に気がかりですよね。特に骨軟部腫瘍という聞きなれない病気を疑われ受診してくる方は、当然みな不安な表情をされています。しかし当科では、紹介元の医療機関で病理診断(顕微鏡的な診断)がついていない初診の患者さんのうち、最終的に悪性腫瘍であった方の割合は2割から3割とけっして多くはありません。また、かりに悪性腫瘍だとしても早期発見・早期治療により治癒するケースは増えてきております。いずれにせよ病気の正体を理解して正しく怖がることが重要ですので、お聞きになりたいことがあれば当科のスタッフになんでもご質問ください。
 もうひとつ当科に受診される患者さんの心配は、後に述べますように運動器の疾患が多いので、元どおりに歩けるようになるのか、まさか手足(四肢)の切断などと言われるのではないかという不安があります。現在さまざまな検査や治療法の進歩により治療初期から切断が必要なケースはきわめて少なくなりました。完全に元どおりの機能に回復できなくとも、可能な限り日常に戻れるようリハビリテーション部門と協力しながら解決策を見つけていきます。
 その他、経済的な不安・仕事復帰の不安・修学の不安などなど、専門の相談窓口がありますのでお気軽にご相談ください。

2.骨軟部腫瘍外科が担当する病気は?

 骨軟部腫瘍外科は文字どおり骨の腫瘍と軟部組織の腫瘍を診療しています。ここでいう軟部組織とは筋肉や脂肪組織、末梢神経、皮膚・皮下組織など骨以外の軟らかい組織のことで、身体のいたるところに存在します。特に四肢や背骨(脊椎)の、骨、関節、筋肉あるいは末梢神経は、運動器とよばれる器官を構成しています。運動器は、姿勢の保持、歩行などの移動動作、物を持ち上げる動作、手や指を細かい動作を担っており、一般的には整形外科がたずさわる分野であります。肉腫と呼ばれる骨や軟部組織の悪性腫瘍がこれら運動器に発生することが多いため、歴史的に整形外科が肉腫の診療を行ってきました。当科の前身も整形外科でありますが、抗がん剤の進歩や重粒子線治療の発展により整形外科領域以外の肉腫に対しても診療する機会が増えてきました。
 実際には骨腫瘍・軟部腫瘍とも多くの種類があり、それぞれに良性と悪性があります。悪性では、骨や軟部組織から発生する肉腫(骨軟部肉腫)と、内臓がんなどが転移して発症する転移性骨軟部腫瘍があります。それ以外にも多発性骨髄腫や悪性リンパ腫など血液系の悪性腫瘍も骨腫瘍や腫瘤を形成し当科に紹介されることもあります。初診外来では良悪性はもとより病気の本体がわかっていないことがほとんどで、まずおおまかな疾患の交通整理のために、血液検査や画像検査を行っていきます。

3.骨軟部腫瘍外科の初診から診断方法について

 初診外来での血液検査や画像検査で、本体が内臓がんの転移や血液系の悪性腫瘍ということが判明すれば、該当する担当科に紹介していきます。それでもはっきりしないときや、当科が主に担当する原発性の骨軟部腫瘍を疑う場合には生検を行いますが、実際には生検まで要さず定期的な画像検査で済む場合も多いです。
 生検は病巣の一部をサンプルとして採取し、病理診断をつけるための一連の処置です。当科で行っている生検は、やや太めの針で採取する針組織診と、手術的に組織を採取する切開生検術があります。骨軟部肉腫の診断では、病巣内に異なる組織が混じっていたり、間質という細胞以外の所見が決め手になることもあるので、切開生検術が推奨されています。生検から診断判明に要する日数はおおよそ1週間から10日間です。最近では遺伝子検索が必要となることもあります。

4.治療について

 まず当科が主に治療を行う原発性の骨軟部腫瘍について述べます。
 原発性骨軟部腫瘍は発生頻度が少なく、悪性である骨軟部肉腫は「希少がん」と呼ばれています。一方で組織型(顕微鏡レベルの病気のタイプ)の種類は多く、診断によって治療法や予後が異なってきます。治療の原則は手術により病巣を切除することですが、組織型によっては抗がん剤治療を手術の前に行うこともあります(骨肉腫、ユーイング肉腫、軟部肉腫の一部)。
 手術による切除が難しい場合は放射線治療を行います。従来の放射線治療では骨軟部肉腫の根治は難しいといわれてきましたが、近年重粒子線という特殊な放射線を用いることにより、根治を期待できる症例も増えてきております(2016年度から公的保険適応)。当センターは、骨軟部腫瘍に対し、手術、抗がん剤化学療法、放射線治療、重粒子線治療が可能な全国でも数少ない施設であり、手術と重粒子線治療の併用療法など積極的に取りくんでおります。手術的切除が難しい症例に重粒子線治療を行うと述べましたが、腹部や骨盤などの病巣に対しそのまま重粒子線治療を行うと近くの臓器に悪影響を及ぼす場合があります。特に大腸などの消化管は放射線に弱いので、病巣と消化管の間に防波堤を設置する手術(合成吸収性材料留置術、いわゆるスペーサー留置術)が必要なことがあります。あるいは、同様の理由から重粒子線治療の前に人工肛門が必要となることもあり、これらの手術を当センター消化器外科のグループの協力を仰いで行うこともあります。

 次に、転移性骨軟部腫瘍の治療に関してですが、特にがんの骨転移の症状としては、疼痛はもちろん病的骨折や脊椎(せぼね)に転移し下肢麻痺をきたし、歩行困難となる場合もあります。近年ではがん医療全体の進歩で、骨転移をきたしてもがんと共存しながら(担がん)長期生活される方も増えてきました。元のがんを担当する原発科と連携し、手術適応を十分に検討した上で、早く起きることができるよう(QOL=Quality of Lifeの改善)積極的に手術を行っています。

5.受診に際してご注意いただきたいこと

 当センターでは小児科が常設されておらず、原則的に義務教育が終わった年齢以降の患者さんが対象となります。それ以下の年齢の方は神奈川県立こども医療センターの受診をお願いしておりますが、外来通院で経過観察だけの方や、まもなく中学を卒業され一人で入院生活を送れるような方は診療可能なこともありますのでご相談いただければと思います。
 当骨軟部腫瘍外科では、現在一般整形外科診療は行なっておりません。担がんでも整形外科的変性疾患(脊椎症、関節症)が症状の主体となっている場合は、お近くの整形外科受診をお勧めしておりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。

手術実績

 当科の2019年度(2019年4月~2020年3月)の手術件数は226件で内訳は以下のごとくです。

生検 65件
原発性骨腫瘍 13件: 良性 3件 悪性(骨の肉腫) 10件
原発性軟部腫瘍 94件: 良性 33件※ 悪性(軟部肉腫) 61件
転移性骨軟部腫瘍 23件: 転移性骨腫瘍 16件 転移性軟部腫瘍 7件
(リンパ節転移含む)
その他の悪性骨軟部腫瘍 1件
重粒子線治療のための
吸収性スペーサー留置術
1件
その他 29件
※脊髄腫瘍(硬膜内髄外)2例含む

重粒子線治療実績

 重粒子線治療を行った骨軟部腫瘍の症例で、当科が介入した3年間の件数を以下にお示しします。

2017年度 20件
部位: 頭頸部3、脊椎・傍脊椎6、胸壁2、骨盤内2、仙骨3、四肢4
組織型: 骨肉腫1、軟骨肉腫4、脊索腫3、脂肪肉腫3、その他の軟部肉腫7、その他2
2018年度 27件
部位: 頭頸部1、脊椎2、胸壁2、腋窩・肩甲帯2、骨盤骨・骨盤内・臀部4、後腹膜3、仙骨2、四肢7、その他4
組織型: 骨肉腫4、軟骨肉腫3、脊索腫3、脂肪肉腫5、未分化多型肉腫4、その他の軟部肉腫8
2019年度 26件
部位: 頸部・頭頸部2、脊椎・傍脊椎4、胸腔・縦郭4、骨盤骨・骨盤内・臀部6、後腹膜5、仙骨2、四肢3
組織型: 骨肉腫・骨未分化多型肉腫4、軟骨肉腫2、脊索腫4、脂肪肉腫8、未分化多型肉腫3、その他の軟部肉腫5

スタッフ紹介(2020.4.1現在)

診療医師名 認定資格
骨軟部腫瘍外科部長
 比留間 徹
 横浜市立大学医学部 昭和62年卒
 横浜市立大学大学院 平成3年修
日本整形外科学会 整形外科専門医
骨軟部腫瘍外科医師
 藤田 真太朗
 東邦大学医学部 平成25年卒
日本整形外科学会 整形外科専門医
骨軟部腫瘍外科医師
 徳永 雅彦
 川崎医科大学医学部 平成26年卒
 

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