受診を希望される方へ

治療対象部位について

 重粒子線治療の適応となる部位について、以下に概要を記載しております。

 ※ 各部位をクリックすると詳細がご覧いただけます。

  1. 頭頸部がん
  2. 肺がん
  3. 食道がん
  4. 肝臓がん
  5. 胆道がん
  6. 膵臓がん
  7. 大腸がん
  8. 前立腺がん
  9. 婦人科がん
  10. 骨軟部腫瘍
  11. 転移性腫瘍

頭頸部がん

治療対象
  1. 非扁平上皮がん(腺がん、腺様嚢胞がん、粘表皮がん等)
  2. 粘膜悪性黒色腫
  3. 頭頸部領域の骨軟部悪性腫瘍(骨肉腫、軟部肉腫等)
  4. 頭頸部扁平上皮癌(咽喉頭を除く)
対象となる病態・条件
  • 組織学的に診断された頭頸部がんである。
  • 他の臓器やリンパ節に転移がない。
重粒子線治療

1日1回(20-30分)、週に4回、合計16回(約4週間)の治療です。

期待される治療効果

非扁平上皮癌および粘膜悪性黒色腫全体の5年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は76%、5年生存率は65%です*。頭頸部骨軟部腫瘍の5年生存率は60-70%です*。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(皮膚、粘膜、唾液腺、筋肉、骨など)に有害反応が出現します。また、腫瘍と近接する脳や脊髄、視神経に晩期有害反応が出現することがあります。
治療後しばらくしてから、治療した部位の皮膚、粘膜、骨などが感染・壊死を起こして欠損し、徐々に進行・拡大することあります。

* 多施設共同後向き観察研究(J-CROS, 2015)データ

 

肺がん

治療対象
  1. 転移および隣接臓器に浸潤のない肺がん
  2. 転移性肺腫瘍(肺転移)(→ 転移性腫瘍を参照下さい)
対象となる病態・条件
  • 組織診、細胞診または臨床的に診断された原発性非小細胞肺癌である。
  • 腫瘍の中心部が肺野の末梢に存在する。
  • リンパ節や他の臓器に転移がない。
重粒子線治療

1日1回(20-60分)、週に4回、合計4回(約1週間)の治療です*。

期待される治療効果

臨床病期I期(末梢型)の3年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は88%、3年全生存率は83%です**。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(皮膚、胸壁・肋骨、肺・気管支)に有害反応が出現する可能性があります。

* より正確に治療するために、気管支鏡を用いて肺に金属マーカーを挿入する場合があります。
** 多施設共同後向き観察研究(J-CROS, 2015)データ

 

食道がん

治療対象

早期食道がん

対象となる病態・条件
  • 組織学的に原発性食道癌と診断されている。
  • 粘膜下層までにとどまる病変である(臨床病期I期)。
  • リンパ節転移、遠隔転移がない。
重粒子線治療

1日1回(20-30分)、週に4回、合計12回(約3週間)の治療です*。

期待される治療効果

先行施設のデータでは、16症例中4例に局所再発(重粒子線治療を行なった部位の再発)がありましたが、救済治療が安全に行われました。3年全生存率100%、4年全生存率は83%でした**。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(食道、皮膚、肺、気管など)に有害反応が出現する可能性があります。

* より正確に治療するために、金属クリップを留置する場合があります。
** 先行施設のQST病院(旧放射線医学綜合研究所病院)のデータを参考にしています(Yasuda S. 2014, Carbon-Ion Radiotherapy. Principle, Practice, and Treatment Planning, Tsujii H. eds., Springer, Chapter 23)。

 

肝臓がん

治療対象
  1. 肝細胞がん
  2. 肝内胆管がん
  3. 転移性肝腫瘍(肝転移)(→ 転移性腫瘍を参照下さい)
対象となる病態・条件
  • 組織学的または臨床的に診断された肝細胞癌あるいは肝内胆管癌である。
  • 他臓器転移がなく限局性の病変(径12cm以下)である。
  • 肝機能がある程度保たれている(Child-Pugh分類がAまたはB)。
  • 腫瘍が広く消化管に接していない。
  • 未治療あるいは、治療対象病変への前治療から1か月以上が経過しており、画像上残存ないし再発が確認されている。
重粒子線治療

1日1回(20-60分)、週に4回、合計4回(約1週間)の治療です*。消化管等に近接している場合は、合計12回(約3週間)の治療となります*。

期待される治療効果

単発肝細胞癌の3年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は86%、3年全生存率は82%です**。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(皮膚、皮下組織、肋骨、消化管、肝機能等)に有害反応が出現する可能性があります。

*より正確に治療するため、肝臓に金属マーカーを挿入する場合があります。
** 多施設共同後向き観察研究(J-CROS, 2015)データ, Komatsu et al. Cancer, 2011; 117, 4890-4904

 

胆道がん

治療対象

肝内胆管がん(→ 肝臓がんを参照下さい)
(胆のう、肝外胆管がんに対する重粒子線治療は行なっていません)

 

膵臓がん

治療対象
  1. 局所進行膵がん
  2. 膵がん術後局所再発
対象となる病態・条件
  • 細胞診あるいは組織診で膵臓原発の浸潤性膵癌と診断されている。
  • 遠隔転移がない(N0-1M0)。
  • 消化管に浸潤していない。
  • 胆管内に金属製ステントの留置がない(プラスチック製は治療可能)。
重粒子線治療

1日1回(20-60分)、週に4回、合計12回(約3週間)の治療です。
原則としてゲムシタビンによる化学療法を併用します。

期待される治療効果

局所進行膵がん症例の解析では、Gemcitabine併用した症例の2年生存率は48%です*。また、術後再発症例の2年生存率は51%です**。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(皮膚、腹壁、消化管、肝機能、胆道)に有害反応が出現する可能性があります。

*,** 先行施設のQST病院(旧放射線医学綜合研究所病院)のデータを参考にしています(*Shinoto M et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2016; 95: 498-504, **Kawashiro et al. Radiother Oncol, 2018; 129: 101-104)。

 

大腸がん

治療対象

大腸がん術後骨盤内再発
(大腸がんそのものについての重粒子線治療は行なっていません)

対象となる病態・条件
  • 原発性大腸癌切除後の組織学的もしくは臨床的に再発と診断されている。
  • 再発病変が骨盤内に限局している。
  • 骨盤外に再発病変がない。
  • 消化管浸潤がない。
  • 吻合部再発でない。
重粒子線治療

1日1回(20-60分)、週に4回、合計16回(約4週間)の治療です。

期待される治療効果

5年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は88% 、5年生存率は59%です*。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(皮膚、神経、骨、消化管など)に有害反応が出現する可能性があります。

* 先行施設のQST病院(旧放射線医学綜合研究所病院)のデータを参考にしています(Yamada M et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2016; 96: 93-101)。

 

前立腺がん

治療対象

限局性および局所進行前立腺がん

対象となる病態・条件
  • T1c-T3もしくはT4(膀胱頸部浸潤)の原発性前立腺癌である。
  • リンパ節転移、遠隔転移がない。
  • 病理組織学検査によるGleason Scoreが明らかである。
  • 生検前のPSA値が明らかである。
重粒子線治療

1日1回(10-15分)、週に4回、合計12回(約3週間)の治療です。
病態によって、低・中・高リスク群に分類されますが、中・高リスク群の場合はホルモン療法を併用します。

期待される治療効果

5年生化学的非再発率は低、中リスク群で90-95%、高リスク群85-90%です*。
治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(尿道、膀胱、直腸、皮膚)に有害反応が出現する可能性があります。
尿路(頻尿、血尿など):5-6%未満(Grade 2以上の反応)*
直腸(血便など):1%未満(Grade 2以上の反応)*

* 多施設共同後向き観察研究(J-CROS, 2015)データ

 

婦人科がん

治療対象
  1. 局所進行子宮頸がん
  2. 婦人科領域悪性黒色腫
対象となる病態・条件
  • 組織学的に腺癌または腺扁平上皮癌と診断されている。
  • 傍大動脈領域のリンパ節転移、他臓器転移がない。
  • 消化管浸潤がない。
  • 子宮頸がんに対する手術、放射線、抗がん剤の治療を受けていない。
重粒子線治療

1日1回(20-30分)、週に4回、合計16回(約4週間)の重粒子線治療に引き続き、子宮頸部腺癌では腔内照射を3回行います。全治療期間は6週間程度です。
子宮頸部腺癌では、原則としてシスプラチンによる化学療法を併用します。

期待される治療効果

子宮頸部腺癌の場合、シスプラチンの併用で2年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は71%、2年全生存率は88%です*。治療効果は病巣の状態によっても変わりますので個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(消化管、膀胱、皮膚など)に有害反応が出現する可能性があります。

* 先行施設のQST病院(旧放射線医学綜合研究所病院)のデータを参考にしています(Okonogi N et al. Cancer Med, 2018; 7: 351-359)。

 

骨軟部腫瘍

治療対象

手術による根治的な治療法が困難である限局性の骨軟部腫瘍
(がんの骨への転移(転移性骨腫瘍、骨転移)に対する重粒子線治療は行なっていません)

対象となる病態・条件
  • 組織学的に診断された骨軟部腫瘍である。
  • 根治的な切除が非適応である(専門医が根治切除不可能と判断した症例)。
  • 照射領域に金属固定器具などの人工物がない。
重粒子線治療

1日1回(20-60分)、週に4回、合計16回(約4週間)の治療です。

期待される治療効果

種々の組織型を含む解析では5年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は68% 、5年生存率は65%でした*。治療成績は組織型や悪性度によって大きく異なります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織(皮膚、神経、骨、消化管など)に有害反応が出現する可能性があります。

* 多施設共同後向き観察研究(J-CROS, 2015)データ

 

転移性腫瘍

治療対象
  1. 転移性肺腫瘍(肺転移)
  2. 転移性肝腫瘍(肝転移)
  3. 転移性リンパ節(リンパ節転移)

先進医療で重粒子線治療が認められている転移性腫瘍は上記の3病態です。上記以外の転移腫瘍(脳転移や骨転移など)は対象となりません。

対象となる病態・条件
  • 3個以下の転移で1つの照射野に含めることができる。
  • 原発巣が手術や放射線治療等を行い、残存や再発がない。
  • その他に転移がない。
重粒子線治療

1日1回(20-60分)、週に4回。合計4回(約1週間)から16回(約4週間)の治療です。治療回数は病態により異なります。

期待される治療効果

転移性肺腫瘍の場合、2年局所制御率(重粒子線治療を行なった部位が治っている確率)は95%、2年生存率は78%です*。転移性肝腫瘍の場合、それぞれ83%、57%、転移性リンパ節の場合、それぞれ76%、67%です*。がんの再発だけでなく転移の有無やもともと持っている病気の状態などによっても変わるため、個人差があります。

予測される主な有害反応

治療した部位に含まれる正常組織に有害反応が出現する可能性があります。

* 多施設共同観察研究(J-CROS, 2019)データ