重粒子線治療とは

重粒子線治療とは

重粒子線治療の特徴
主ながんの治療法

重粒子線治療は放射線治療の1つです

現在、がんの治療法は外科手術、放射線治療、化学療法が3本柱となっています。
通常の放射線治療は、光子線であるX線などが使われていますが、陽子線や重粒子線などの粒子線による治療も行われています。

がん治療の3本柱の比較
  外科手術 放射線治療 化学療法
長所
  • がんを直接取り除くため、治る可能性が高いとされている
  • 身体への負担が少ない
  • がんの種類によっては外科手術と同じ治癒率をあげている
  • 全身を対象とした治療が可能
短所
  • 身体の機能や形を損なう場合がある
  • 部位や患者の年齢・持病などにより、適応にならない場合がある
  • 局所の副作用がおこることがある
  • 化学療法だけでは治りにくい
  • 全身的な副作用が起こりやすい

光の速さの70%のスピードでがんに照射

光の速さの70%のスピードでがんに照射

炭素イオンを光の速さのおよそ70%まで加速した「重粒子線」をからだの奥のがん細胞に照射します。

炭素イオンとは
陽子などの原子核を加速してできる粒子線のうち、現在、重粒子線として治療で用いられているのは炭素イオンです。炭素イオンは陽子と比べて約12倍の質量があります。

炭素イオン概念図

重粒子線治療の特徴

重粒子線治療の2つの特徴

重粒子線治療の特徴

神奈川県立がんセンターでは、「患者さんの身体にやさしい治療の提供」「生活の質を重視した治療の提供」を基本コンセプトとしています。重粒子線治療の特徴は以下の通りです。

からだの深いところにある"がん"のみを集中的に照射

からだの深いところにある"がん"のみを集中的にたたいて、その手前や奥など周りの正常な細胞を傷つけにくいため、副作用が少なくなります。

今までの放射線治療では治りにくい"がん"にも効く

重粒子線は、X線や陽子線などによる放射線治療と比べて、がんを殺傷する能力が強いため、今までの放射線治療が効きにくかった肉腫など難治性のがんにも効きます。

重粒子線治療は短期間での治療が可能

前立腺がんでは、強度変調放射線治療(IMRT)で40回前後の照射が必要ですが、重粒子線治療では12回と少ない照射回数で済んでいます。
また、I期肺がんでは、定位放射線治療(SRT)で4回~6回の照射ですが、重粒子線治療では1回の照射で終わる治療法が開発されています。

※短期間での治療とは、従来の放射線治療と比較した照射回数です。
※重粒子線治療の照射回数は(独)放射線医学総合研究所での実績に基づく。

重粒子線治療の治療例

肺がん(1回照射後)

肺がん治療例

重粒子線の照射後、結節が消えたことがわかります。
※画像提供:(独)放射線医学総合研究所