各学部の研究活動
がん免疫療法研究開発学部

スタッフ

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部長 笹田 哲朗(ささだ てつろう)
内線番号 4036(PHS 5063)
Eメール tsasada[at]kcch.jp
専門 腫瘍免疫学、消化器外科学
任期付研究員 紅露 拓(こうろ たく)
内線番号 4037
Eメール kourot[at]gancen.asahi.yokohama.jp
専門 免疫学
任期付研究員 氷室 秀知(ひむろ ひでとも)
内線番号 4037(PHS 5938)
Eメール h-himuro[at]kcch.jp
専門 腫瘍免疫学、放射線腫瘍学
特任研究員 魏 菲菲(うぇい ふぇいふぇい)
内線番号 4037
Eメール feifei.wei[at]gancen.asahi.yokohama.jp
専門 データサイエンス、メタボロミクス
研究補助員 東島 直子(ひがしじま なおこ)
研究補助員 若月 誠(わかつき まこと)
研究生 洞口 俊(ほらぐち しゅん)

がん免疫療法研究開発学部の紹介

 がん免疫療法は外科療法、化学療法、放射線療法に次ぐ、“第4のがん治療法”として注目されています。ただし、抗CTLA-4抗体、抗PD1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤やキメラ抗原受容体chimeric antigen receptor(CAR)遺伝子改変T細胞療法などのがん免疫療法の臨床応用が進むにつれて、様々な課題も明らかとなっています。我々は、科学的・医学的根拠に基づいた新規診断・治療法を開発しがん免疫療法をさらに発展させるため、以下のような研究をしています。

研究課題

  1. 遺伝子変異由来新規抗原(ネオアンチゲン)を標的とした個別化がん免疫治療の開発
     正常細胞には存在せずがん細胞にだけ特異的に生じる遺伝子変異由来抗原(ネオアンチゲン)は免疫系から“非自己”として認識され、T細胞を介した強い抗腫瘍免疫応答を誘導する。たとえば、免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1/PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体)の臨床効果は遺伝子変異を多く認めるがん患者で高いが、この原因は遺伝子変異由来ネオアンチゲンの免疫原性の高さによると考えられている。
     ネオアンチゲンの同定法としては、がん細胞特異的な遺伝子変異配列を含みHLA分子に結合すると予測されるペプチドをBioinformatics技術で選択する手法(reverse immunology法)が現在一般的である。しかしながら、このアプローチでは、① 細胞内での抗原プロセシングの過程を予測することが難しい、② ペプチド結合性を予想できるHLA型は頻度の高いものに限られ網羅性に欠ける、などの問題点が指摘されている。実際、reverse immunology法でネオアンチゲン候補と予測されたペプチド配列のうちがん細胞表面に抗原として提示されるのはごく一部のみ(候補の数%)であると報告されている。
     我々は、reverse immunology法に代わる方法として、最先端の質量分析(ペプチドミクス解析)技術を用いてがん細胞表面のHLA分子に提示されたネオアンチゲンペプチドを効率的・網羅的に同定する手法を開発中である。現在、少量(3~4mm角で重量5~60mg)の手術摘出腫瘍組織からペプチドミクス解析(LC-MS/MS)技術を用いて点突然変異(一塩基置換)由来ペプチドを同定する手法を確立している(東京大学およびブライトパス・バイオ(株)との共同研究)が、さらに生検検体など微量の腫瘍組織しか採取できない進行がん患者に対する臨床応用を想定した検討を実施中である。
     現在、reverse immunology法により選択されたネオアンチゲンを用いて個別化がんワクチン療法の早期臨床試験が海外で実施されているが、ネオアンチゲン予測精度の低さが課題とされている。本研究の成果として、ペプチドミクス解析によるネオアンチゲン同定が可能となれば、同定したネオアンチゲンを標的としたワクチン・TCR遺伝子導入T細胞療法など“個別化がん免疫治療”の臨床応用を加速するものと期待される。

    次世代シーケンサーによる遺伝子解析


  2. 免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)におけるバイオマーカー同定と臨床応用
     免疫チェックポイント分子・経路を介した免疫細胞抑制はがんにおける免疫逃避機構のひとつとされ、これを標的とした免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1/PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体など)による治療が各種がん患者に対して臨床応用されている。ただし、免疫チェックポイント阻害薬の臨床効果は現状では20-30%の患者に限られるため、効果の期待できる患者だけを選別する“個別化免疫治療”の開発が望まれている。また、非常に高額(約1000万円/年)であるため、有効な患者を選別するバイオマーカーの開発は医療経済的にも喫緊の課題といえる。現在、抗PD-1抗体治療におけるバイオマーカーとして、① 腫瘍組織でのPD-L1発現、② 腫瘍浸潤リンパ球数、③ がん細胞での遺伝子変異数、などが用いられているが、腫瘍組織を必要とするため患者に対する侵襲が大きいうえに、臨床的意義も定まってはいない。従って、新規バイオマーカー、特に、容易に採取可能な末梢血を用いて評価できるマーカーの開発が期待されている。
     我々は、免疫チェックポイント阻害薬で治療される肺がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、胃がん、などの患者から治療前後に採取した血液、便、腫瘍組織を解析することにより、治療効果・有害事象合併を予測するバイオマーカーを同定中である。これまでに、肺がん患者における治療効果予測マーカーとして末梢血中ケモカインCXCL2(Matsuo N, et al. Int J Cancer. 2019)や末梢リンパ球のTCR・BCR多様性(Nakahara Y, et al. Cancer Immunol Immunother. 2021)などを報告しているが、さらに患者数を増やしてこれらの研究成果を再検証するとともに、新たな視点・手法でのバイオマーカー同定を試みている。

    バイオマーカー同定と臨床応用

  3. 重粒子線照射の免疫学的影響の解明
     放射線(X線)治療後に照射野外の腫瘍が縮小することが知られており、アブスコパル効果と呼ばれる。このアブスコパル効果は抗腫瘍免疫応答の活性化を介することから、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の併用により増強すると期待され、X線治療とICI治療とを併用した多数の臨床試験が実施中である。重粒子線照射ではがん細胞におけるDNA二重鎖切断によるcGAS-STING経路活性化・DAMPs放出などを介してより強い抗腫瘍免疫応答を誘導する可能性が示唆されることから、ICI治療併用により高い抗腫瘍効果(アブスコパル効果)が期待される。しかしながら、重粒子線照射の免疫学的影響を詳細に検討した臨床データは少なく、重粒子線治療にICI治療を併用した臨床報告もない。
     我々は、重粒子線治療とICI治療を併用する新規複合がん免疫療法を臨床応用するための科学的根拠を確立するために、がん患者検体を用いて重粒子線照射の免疫学的影響を解明するための研究を実施中である。なお、重粒子線治療を実施できる医療施設は国内に7か所しかないが、神奈川県立がんセンターは重粒子線治療および免疫チェックポイント阻害剤治療の両方に関して十分な臨床経験を有することから、両者を組み合わせた新規治療法の開発が期待できる。

    重粒子線と腫瘍免疫の関連


  4. 悪性中皮腫に対する新規キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CART)療法の開発
     悪性中皮腫(中皮腫)はアスベスト(石綿)曝露による健康被害として社会問題となった悪性度の高い疾患であり、日本では年々患者が増加している。中皮腫は早期診断が難しく進行した状態で発見されることがほとんどで抗がん剤や放射線療法に抵抗性を示すため、新規治療法の開発が望まれる。
     神奈川県立がんセンターの辻らは優れた特異性(99.0%)・感度(91.3%)で中皮腫を検出できる新規モノクローナル抗体(SKM9-2)を樹立した(Tsuji S, et al. Sci Rep. 2017)が、その認識抗原HEG1は正常細胞にほとんど発現しないことから中皮腫に対する標的として極めて有望である。我々は、SKM9-2抗体の抗原認識配列を含むキメラ抗原受容体 [chimeric antigen receptor(CAR)] 遺伝子を導入したT細胞を作成し、中皮腫に対する新規がん免疫療法として臨床応用するために、基礎研究を実施中である。

    悪性中皮腫に対する新規キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CART)療法の開発

がん免疫療法研究開発学部の研究業績

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