各学部の研究活動
がん免疫療法研究開発学部

着任のごあいさつ

 11月16日付けで、臨床研究所 がん免疫療法研究開発学部・がんワクチンセンターの部長として着任いたしました笹田哲朗です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は1987年に京都大学医学部医学科を卒業後、約10年間にわたり京都大学医学部附属病院および関連病院にて消化器外科医として多数のがん患者さんを診て参りました。手術によって完治される患者さんがおられる一方で、手術のできない患者さんや手術後に再発された患者さんも多く診させていただきましたが、当時は化学療法、放射線療法など手術以外の治療法ではほとんど歯が立たないという状態でした。そうした外科医としての苦い経験から新しいがん治療法開発の必要性を痛感して、がんの基礎研究・トランスレーショナル研究に携わるようになりました。最初に京都大学大学院医学研究科(京都大学ウイルス研究所 淀井淳司教授)および米国Harvard大学Dana-Farber Cancer Institute(Ellis L Reinherz教授)において基礎免疫学研究に従事した後、がん免疫研究を本格的に開始いたしました。特に、2006年からはDana-Farber Cancer Institute, Cancer Vaccine Centerに免疫解析の責任者として招聘され、多数のがん免疫療法の治験に参加し、抗CTLA-4抗体(Ipilimumab)などの新規がん免疫治療薬の臨床開発にも貢献いたしました。また、2010年からは久留米大学医学部・がんワクチンセンターに異動し、がんペプチドワクチン療法の臨床開発(特に、各種がんに対する臨床試験・医師主導治験)に参加し豊富な経験を積みました。

 がん免疫療法は外科療法、化学療法、放射線療法に次ぐ、新世代がん治療法として注目を浴びてきました。特に、最近では抗CTLA-4抗体、抗PD-1/PD-L1抗体などのimmune checkpoint inhibitorやキメラ抗原受容体chimeric antigen receptor(CAR)遺伝子改変T細胞療法など、がん免疫療法の臨床効果を科学的に実証する報告も相次いでいます。ただし、その治療効果はがん種や患者によって限定的であり、残念ながら第4のがん治療法として公認されるには至っていません。私は、これまでの経験をもとに一日も早くがん患者さんに有効な治療法を届けられるようにがん免疫療法の開発研究を継続・発展させたいと考えております。科学的・医学的根拠に基づいた新しい治療法の開発を通して、神奈川県立がんセンターが“がん免疫療法の拠点”として国内外で高く評価されるように努力を続けてまいりたいと考えておりますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。