診療科・各部門のご案内
腫瘍内科

特色

 腫瘍内科では、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、および化学療法が行われる固形癌(進行・再発大腸癌、他院再発乳癌、肺以外の小細胞癌、原発不明癌など)の患者さんを対象に診療を行っています。また、がん薬物療法は、標準化学療法、高用量化学療法、大量化学療法併用自家末梢血幹細胞移植、同種造血幹細胞移植と多岐におよんでいます。
 治療を始めるにあたっては、病名や病態および治療の内容や副作用等について詳しい説明を行い、患者さんご自身に十分理解して頂き、同意を得た上で治療を行います。治療は最新の科学的根拠に基づいた標準的治療を行います。また、病気の種類や病態によっては、治療方針決定の為に関連各科医師で集まって治療方針を話し合う"キャンサーボード"を開催し、個々の患者さんに最適な治療を検討しています。
 化学療法以外にも手術や放射線療法、緩和療法など他の診療科とも連携し、患者さんの状況に合わせて、より質の高い医療を提供することを心がけています。化学療法は初回の化学療法導入は入院治療で経過をみます。その後の治療は、一部の抗がん剤治療法を除き、原則として外来化学療法室での外来化学療法に移行し、通院で治療を継続します。当院での通院治療が円滑に行われるように、御自宅近くの医療機関と連携をしていく場合もあります。

 外来は、月~金曜日まで毎日診療を行っています。セカンド・オピニオン外来は火曜・金曜に開いていますが、お急ぎの場合は日程調整も可能ですので、患者支援センターの担当者を介してご相談下さい。

 次に、当科で扱っている主な疾患の治療について御説明いたします。

悪性リンパ腫

 ホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma:HL)と非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin's lymphoma:NHL)に大別されます。日本における悪性リンパ腫の罹患率は増加傾向にあり、人口10万人あたり約10人程度です。

びまん性大細胞B細胞性リンパ腫:Diffuse Large B-cell Lymphoma(DLBCL)

 日本における悪性リンパ腫の約半分がDLBCLです。
 未治療例に対しては、リツキシマブ併用CHOP療法(R-CHOP療法)を行います。年齢によって、抗がん剤の投与量を調整しています(70歳以上80歳未満:標準投与量の80%量、80歳以上:標準投与量の50%量に減量)。また、初発時に中枢神経予防は、精巣、乳房、副腎、骨、副鼻腔に浸潤を認めた70歳未満の患者さんに対しては、完全寛解に到達した後にメソトレキセート大量療法による追加治療をおこなっています。
 再発後の救援化学療法(ESHAP療法、DeVIC療法等)を行います。これらの治療は入院が必要です。65歳以下の患者さんで救援化学療法の治療効果をみとめる場合は、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を行います。

濾胞性リンパ腫:Follicular Lymphoma(FL)

 限局期の一部には局所放射線照射を行います。それ以外では、R-CHOP療法を行います。再発した場合には、年齢や全身状態、リンパ腫の状態を総合的に判断して、救援治療開始の適否やその時期を判定します。治療が必要な場合には、ベンダムスチンやフルダラビン等の薬剤を含む治療をおこないます。

バーキットリンパ腫:Burkitt Lymphoma(BL)

 入院のうえ、R-hyper CVAD/MA療法を行います。

成人T細胞性リンパ腫白血病: Adult T-cell leukemia/lymphoma(ATLL)

 急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型はmodified LSG15(mLSG15)療法を行います。mLSG15は入院治療になります。治療効果が得られた65歳以下の患者さんでは、同種造血幹細胞移植治療を検討します。

節外性NK/T細胞リンパ腫:Extranodal NK/T cell lymphoma, nasal type(ENKL)

 限局期に対しては放射線治療(50Gy)+ 2/3DeVIC療法を行います。進行期にたいしてはSMILE療法を行います。これらの治療は入院で行います。65歳以下の進行期症例や再発例では、自家造血幹細胞移植あるいは同種造血幹細胞移植を検討します。

末梢性T細胞性リンパ腫・血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫

 CHOP療法を行います。年齢によって、抗がん剤の投与量を調整しています。

ホジキンリンパ腫:Hodgkin Lymphoma

 一部の限局期の症例に対してはABVD療法+局所放射線照射を行います。それ以外ではABVD療法を行います。再発した場合には、救援療法(CHASE療法、DeVIC療法、ESHAP療法)を行います。治療効果が得られた場合、65歳以下では自家造血幹細胞移植併用大量化学療法を行います。

  • 2013年4月現在行われている悪性リンパ腫関連の臨床試験
    • 再発・難治T細胞リンパ腫に対するSMILE療法の臨床第II相試験
    • 再発および治療抵抗性末梢T細胞性リンパ腫に対する減量強度移植前治療を用いた同種造血幹細胞移植の有効性に関する検討
    • 再発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対する生物学的予後因子を用いた予後予測モデルの検討
    • 再発・難治性マントル細胞性リンパ腫を対象としたリン酸フルダラビン+リツキシマブ併用療法の抗腫瘍効果および安全性の検討を目的とした多施設共同臨床第II相試験
    • 血管内大細胞型B細胞リンパ腫(Intravascular large B-cell lymphoma;IVLBCL)に対するR-CHOP + R-high-dose MTX療法の第II相試験

多発性骨髄腫

 日本における多発性骨髄腫の罹患率は人口10万人あたり約2人程度です。貧血や高カルシウム血症、腎障害、骨病変、感染、アミロイドーシス等の症状を伴う場合、治療を開始します。65歳以下の未治療多発性骨髄腫では、ベルケイドを用いた治療を行います。標準治療はBd療法です。Bd療法にエンドキサンを追加した3剤併用療法(VCD療法)の臨床試験も行っています。治療効果がある場合は、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法を行います。66歳以上では、MP療法にベルケイドを加えたVMP療法を行います。
 再発・難治症例に対してはレナリドマイドやサリドマイドによる治療を行います。

  • 2013年4月現在行われている多発性骨髄腫関連の臨床試験
    • 未治療初発移植非適応骨髄腫患者におけるMPB導入療法、 レナリドミド強化及び維持療法の有効性・安全性を検証する 第II相臨床研究
    • 移植適応未治療多発性骨髄腫患者に対するVCD(ボルテゾミブ/ シクロホスファミド/デキサメタゾン)療法の臨床第II相試験
    • 多発性骨髄腫の治療効果判定における PET-CT の有効性に関する前向き臨床観察研究-YCUMM1201 trial
  • 2016年5月現在 参加中

大腸癌、直腸癌

 再発・進行大腸癌に対し、外来化学療法としてmFOLFOX6療法、FOLFIRI療法、XELOX療法などの各種化学療法と分子標的薬(bevacizumab、cetuximab、panitumumab)を併用した治療を行っています。

乳癌

 再発・進行乳癌に対し、外来化学療法として各種化学療法、内分泌療法を行っています。

肺外小細胞癌(神経内分泌腫瘍)

 シスプラチン、イリノテカンやカルボプラチン、ベプシド、アムルビシン等、肺の小細胞がんに準じた治療を行っています。

原発不明癌

 原発不明癌に対する標準治療は確立していませんが、原発不明がん診療ガイドライン2010年版(日本臨床腫瘍学会)やNCCN腫瘍学臨床診療ガイドラインに2012年版基づいた診断および治療原則で行っています。

 2011年1月~12月に当院を受診された初診の患者さんは232人でした。そのうち、悪性リンパ腫が112人、多発性骨髄腫5人、消化管がん30人(大腸26人、小腸・虫垂 各2人、胃癌2人)、原発不明がん 29人、再発乳癌 6人、小細胞がん・神経内分泌癌 7人でした。

治療成績

 2003年から2009年に当科でリツキシマブ併用CHOP療法(R-CHOP)で初回治療を行ったびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫:DLBCL(175例)と濾胞性リンパ腫:FL(46例)の治療成績をお示しします。

全生存期間

 全生存期間とは、死因を問わない生存期間のことです。(リンパ腫以外の原因による死亡を含みます。)
 DLBCLおよびFLの患者さん全体の5年における累積生存率はそれぞれ、78.1%、90.7%でした(図1、2)。

図1.DLBCL患者の全生存期間
図1.DLBCL患者の全生存期間

図2.FL患者の全生存期間
図2.FL患者の全生存期間

無増悪生存期間

 無増悪生存期間とは、悪性リンパ腫の増悪または死因を問わない生存期間のことです。(簡単にいうと、リンパ腫の増悪もなく生存している確率のこと。)初期治療で完全寛解(CT検査等で最初に見つかった病変部位がすべて消失した状態)に到達したDLBCL 患者さん152人の5年における累積無増悪生存率は79.6%でした(図3)。

図3.DLBCL患者の無増悪生存期間
図3.DLBCL患者の無増悪生存期間

リスク群別の治療成績

 DLBCL患者さんの診断時の年令、病期(病気の拡がり)、全身状態、LDH値(血液検査のデータ)、節外病変(リンパ節以外への拡がり)と予後が相関することが知られています。これらの5つの因子をもとに、低リスク群、低中リスク群、高中リスク群、高リスク群の4つのリスク群に分類されます。図4は2003年から2009年に当科でR-CHOPで初回治療を行ったDLBCL患者さんのリスク群別の無病生存期間です。青は低リスク群、緑は低中リスク群、黒は高中リスク群、赤は高リスク群を示します。低リスク群、低中リスク群、高中リスク群、高リスク群の5年における無増悪生存率はそれぞれ、88.9%、92.5%、77.3%、73.5%でした。

図4.DLBCL患者のリスク群別無増悪生存期間
図4.DLBCL患者のリスク群別無増悪生存期間

 FL患者さんでは診断時の年令、病期(病気の拡がり)、LDH値(血液検査のデータ)、リンパ節病変数、ヘモグロビン値(血液検査のデータ)の5つの因子をもとに、低リスク群、中間リスク群、高リスク群の3つのリスク群に分類されます。図5は2003年から2009年に当科でR-CHOPで初回治療を行ったFL患者さんのリスク群別の全生存期間です。青は低リスク群、緑は中間リスク群、赤は高リスク群を示します。低リスク群、中間リスク群、高リスク群の5年における累積生存率はそれぞれ、100%、87.7%、82.5%でした。

図5.FL患者のリスク群別累積生存期間
図5.FL患者のリスク群別累積生存期間

 最上記の成績は全体の平均的なデータを示すものであり、実際の効果は患者さんそれぞれのご病状によって異なります。その点をご理解の上、参考にして頂ければ幸いです。

スタッフ紹介

診療医師名 認定資格
腫瘍内科部長 酒井 リカ院長補佐
(兼)医療局長
(兼)腫瘍内科部長
 酒井 リカ
 佐賀医科大学医学部
 平成元年卒
日本内科学会 総合内科専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会
 がん薬物療法専門医・指導医
日本血液学会 血液専門医・指導医
日本がん治療認定医機構
 がん治療認定医
日本輸血細胞治療学会 認定医
日本造血細胞移植学会
 造血細胞移植認定医
腫瘍内科医長 高崎 啓孝腫瘍内科医長
 高崎 啓孝
 弘前大学医学部
 平成13年卒
日本内科学会 総合内科専門医・指導医
日本血液学会血液専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
日本がん治療認定医機構
 がん治療認定医
日本造血細胞移植学会
 造血細胞移植認定医
腫瘍内科医長 沼田 歩腫瘍内科医長
 沼田 歩
 横浜市立大学医学部
 平成18年卒
日本内科学会 認定内科医・指導医
日本血液学会血液専門医・指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本造血細胞移植学会 造血細胞移植認定医
腫瘍内科医師 小山めぐみ腫瘍内科医師
 小山めぐみ
 埼玉医科大学
 平成21年卒
日本内科学会 認定内科医
腫瘍内科医師 石山 泰史腫瘍内科医師
 石山 泰史
 昭和大学医学部
 平成22年卒
日本内科学会 認定内科医

(更新日:2016.4.1)

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