診療科・各部門のご案内
消化器内科(消化管)・消化器外科(食道)

食道癌の治療

食道の機能と構造

 食道の主な役割は、喉から胃への食物の輸送路としての通路です。蠕動により食物は胃のほうへ送られます。食道の壁は大きく分けて4層からなり、第1層(粘膜層)、第2層(粘膜下層)、第3層(固有筋層)とその外側にうすい外膜が第4層として存在します(図1)。

食道癌の進行(深達度)

図1 食道癌の進行(深達度) 食道がんは粘膜(第1層)から発生し、周囲へ徐々に広がってゆきます。粘膜下層(第2層)までのがんを表在がん、固有筋層(第3層)より深く進展(浸潤(しんじゅん))したものを進行がんと呼びます。またがんが非連続性に他部位に進展することを転移といいますが、表在がんの時期から血管やリンパ管を介し、転移が始まります。 初期にはリンパ節転移から、進展するにつれ血行性の転移や胸膜、腹膜への転移がおきます。リンパ節転移は頚部~胸部~腹部の広い範囲にわたって生じることが多く、食道がんの発生部位に応じて広く所属リンパ節を一緒に切除して治癒を目指します。
 食道癌は転移進行が早く比較的早くから全身病となるため、局所療法(手術、放射線)の治療成績が低く留まってしまう癌腫の一つです。現在癌の進み具合は、癌が壁のどこまで深く食い込んでいるか貫いてしまっているか、癌が転移したリンパ節がどこまで拡がっているか、臓器に転移はあるかで進行度(ステージ)が決定されます(図2:食道癌取扱い規約)。進行度や全身状態に応じて治療方針が決定されます(図3)。

図2 食道癌取扱い規約

図3 Stage別の治療方針

 治療方法の選択は、食道癌治療ガイドラインを参考に当院で週に1回開催される食道癌カンファランス(消化器内科、消化器外科、放射線科、病理診断科の専門スタッフによる)で討議され決定されます。患者ごとの併存疾患なども考慮して慎重に決定されます。

方針の概要は以下の通りです。

  1. 深さはT1aまででリンパ節転移無しの場合:内視鏡的切除(EMR,ESD)で充分とされる
     → 内視鏡治療へ
  2. 内視鏡切除適応外のStageI、StageII及びStageIIIの場合:現在、手術可能進行食道癌に対する標準治療は"JCOG9907"という多施設共同研究の結果、術前化学療法+手術と設定されています。手術単独、手術+術後化学療法、化学放射線療法などを上回る生存率を示しています。
     → 主に消化器外科(食道外科)が担当します。
  3. 他臓器浸潤の大半、遠隔リンパ節転移、臓器転移の場合:全身治療である化学療法が選択されます。局所治療(手術、放射線療法)は病状に応じて併用致します。
     → 各科で対応いたします。

 化学療法・放射線療法は内科、放射線治療科が対応します。

消化器内科の特色

 進行度がT1aでリンパ節転移がない症例に対しては積極的にESDを行っています。食道ESDにおいては、安全で確実な治療を目的として当院で開発した二点固定ESDを行い、良好な成績を得ています。診断時に手術適応のない進行食道がんに対し、CRT化学放射線治療を行なっています。

消化器外科(食道外科)の特色

 当センター食道外科は設立以来、精度の高い食道癌手術と厚い術後管理を行うとともに、化学療法と手術の集学的治療による治療成績の向上を目指してきました。その一環として1990年より術前化学療法を治療の一つの柱としており、日本でも有数のノウハウを蓄積するとともに、優秀な治療成績を示して参りました。標準的な化学療法であるCDDP+5FU療法を用い術前化学療法の基幹的な報告を果たすとともに、second-line chemotherapyとして注目されてきたドセタキセルを含む化学療法に於いても信頼できる報告をしております。
 現在手術した患者の約7割に化学療法を併用しており、一定のリスクの元に最新の化学療法を駆使した集学的治療を行い(患者ご自身の身体的負担増になるのは否めませんが)、より高い治療成績を患者とともに目指しております。また 食道癌の進行にて肉眼的な切除が困難とされても手術不能と決めつけることなく、一部症例では化学療法を施行してから治療方針を決定するなど柔軟な対応を心がけています。
 食道癌周術期管理では、術前から地区歯科医師会と連携した口腔ケアやエキスパート看護師により術前の呼吸訓練、管理栄養士による術前栄養サポート外来などを導入しています。術中・術後管理としては、早期経腸栄養・早期離床を基本としたmodified-ERAS プロトコールを用いた管理を推進しております。

図4 modified-ERASプロトコール

図5 当センターでの術後早期離床

治療成績

内視鏡治療

 早期食道癌(リンパ節転移の可能性がほとんど無い表在癌=図4:m1-2の深さの癌)に対する内視鏡的治療を行っています。約1時間程度の治療で、1週間前後の入院が必要です。合併症として、治療中の出血、食道の穿孔、狭窄などが起こりえますが、頻度もそれ程高くなく、ほぼ全例輸血や緊急手術などを必要とせず、保存的治療で改善しています。

図4 m1-2の深さの癌

食道粘膜がんの内視鏡的粘膜切除術(EMR)

 *病理深達度別の生存率(食道癌全国登録調査;2007年)
食道癌取扱い規約10版に準ずる

病理深達度別の生存率

手術を中心とした治療

 2007年に食道癌全国登録調査によって報告された進行度別治療成績は、下図に示す通りです。StageⅡ、Ⅲ症例では食道癌治療ガイドラインに則り、術前化学療法(5FU+シスプラチン療法)を取り入れた集学的治療を主に行っております。年齢や腎機能などの全身状態に併せた治療方針の変更などにも対応しております。

cStage別の生存率曲線(食道癌全国登録調査;2007年)
食道癌取扱い規約10版に準ずる

cStage別の生存率曲線

cStage別の1年毎の生存率(食道癌全国登録調査;2007年)
食道癌取扱い規約10版に準ずる

cStage別の1年毎の生存率

放射線・化学療法

 放射線治療と化学療法の併用治療は、両者同時併用で行う場合や、まず化学療法単独で治療導入し、その効果によって手術に進むか、放射線(+/-)化学療法を続けるかを選ぶ場合などがあります。
 近年では、他臓器への浸潤により切除不能であったり、根治的な郭清範囲に入らないリンパ節転移があるⅣ期の食道癌の患者さんでも、化学放射線療法によってそれなりの生存期間を得られると報告されていることから、当院でもこの病期の患者さんの半数には、化学放射線療法を行っています。
 同じⅣ期の患者さんでも、他の臓器への転移があるⅣ期の方(図2:M1)は、化学療法単独による治療が中心となります。
 また、近年同様に、本来なら手術切除できる可能性がある病期の患者さんに対しても、化学放射線療法の有効性が報告されており、手術治療に劣らない生存期間が得られるという報告もあります。
 しかし、初回治療後(いろいろな追加治療をしながら)生きていられる時間が同じだったとしても、手術治療なら一度は食道の癌が体から消えるのに対して、化学放射線療法では食道が温存される代わりに癌も完全消失せず残る可能性があったり、治療一段落後しばらくしてから生じる「晩期障害」という後遺症の問題もあることから、この病期の患者さんからの化学放射線療法のご希望ついては、慎重に相談しながら対応しています。

放射線治療、化学療法治療例の生存率(食道癌全国登録調査;2007年)
食道癌取扱い規約10版に準ずる

cStage別の1年毎の生存率

その他

 治療を続けるのが難しくなった方、最初から、治療によって延命効果を得るのが難しいと予測される病期の患者さんには、症状コントロール目的だけの治療で対応することもあります。例えば、食道癌を手術することも、放射線で小さくすることも出来ず、食道を食事が通らなくなってしまった方に、癌で狭くなったところに内視鏡的にステントという人工の管を留置して、残された生活の中で食事を楽しめるようにしてあげることがあります。当院では2000年~2005年までの6年間で、46例の食道ステント挿入を行っており、半数以上のかた(63.0%)に、一度おうちに帰って過ごすことを可能としています。
 ご希望にそって、ホスピス治療専門の病院への転院・ご紹介などのご相談にものっています。

【外科で行っている高度な専門的医療:主なもの(すべて臨床試験として行っています)】

名 称 研究組織 対 象
臨床病期 IB/II/III 食道癌(T4 を除く)に対する術前 CF 療法/術前 DCF 療法/術前 CF-RT 療法の第 III 相比較試験 JCOG1109 Stage 1B~3 食道癌
切除不能または再発食道癌に対する CF(シスプラチン+5-FU)療法と bDCF(biweekly ドセタキセル+CF)療法のランダム化第 III 相比較試験 JCOG1314 切除不能または再発の食道癌
臨床病期 IB-III (T4 を除く)食道癌に対するS-1術後補助療法の第II相比較試験 JCOG食道癌グループ参加施設 Stage 1B、II、またはT4を除く 食道癌
1次治療を受け疾患進行が認められた切除不能進行又は再発食道癌(腺癌又は扁平上皮癌)の患者を対象としたMK-3475単独療法と治験担当医師選択のパクリタキセル、ドセタキセル又はイリノテカン単独療法を比較する第Ⅲ相無作為化非盲検試験(KEYNOTE-181) 治験 切除不能局所進行性または転移性の食道癌またはSiewert type I食道胃接合部癌(2次治療)

スタッフ紹介

診療医師名 認定資格
吉川 貴己院長補佐(兼)医療管理部長
(兼)消化器外科部長
 吉川 貴己
 横浜市立大学医学部
  平成元年卒
 横浜市立大学大学院
  平成7年修
日本外科学会
  外科専門医・指導医
日本消化器外科学会
  消化器外科専門医・指導医
日本消化器外科学会
  消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会
  技術認定医
横浜市立大学大学院医学研究科
  客員教授
東京医科大学消化器/小児外科
  兼任教授
尾形 高士消化器外科医長
 尾形 高士
 東京医科大学
  平成7年卒
 東京医科大学大学院
  平成15年修
日本外科学会
  外科専門医・指導医
日本消化器外科学会
  消化器外科専門医・指導医
日本消化器外科学会
  消化器がん外科治療認定医
日本消化器病学会
  消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会
  消化器内視鏡専門医・指導医
日本食道学会
  食道科認定医・食道外科専門医
日本がん治療認定医機構
  がん治療認定医、暫定教育医
山田 貴允消化器外科医長
 山田 貴允
 横浜市立大学医学部
  平成14年卒
日本外科学会
 外科専門医
日本消化器外科学会
 消化器外科専門医・指導医
日本消化器外科学会
 消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会
 技術認定医
日本消化器病学会
 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会
 消化器内視鏡専門医
日本がん治療認定医機構
 がん治療認定医
日本消化管学会
 胃腸科専門医
林 勉消化器外科医長
 林 勉
 香川医科大学
  平成15年卒
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会
 消化器外科専門医・指導医
日本消化器外科学会
 消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会
 技術認定医
日本食道学会
 食道科認定医・食道外科専門医
消化器外科医長
 熊頭 勇太
 横浜市立大学医学部
  平成20年卒
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会
 消化器外科専門医
日本がん治療認定医機構
 がん治療認定医
日本消化器外科学会
 消化器がん外科治療認定医
刑部 弘哲消化器外科医師
 刑部 弘哲
 東京医科大学
  平成22年卒
日本外科学会 外科専門医
中園 真聡消化器外科医師
 中園 真聡
 秋田大学医学部
  平成21年卒
日本外科学会 外科専門医
消化器外科医師
 長澤 伸介
 横浜市立大学医学部
  平成21年卒
日本外科学会 外科専門医
原 健太朗消化器外科医師
 原 健太朗
 群馬大学医学部
  平成22年卒
日本外科学会 外科専門医
 
消化器内科部長
 本橋 修
 弘前大学医学部 昭和58年卒
 北里大学大学院 平成元年修
日本内科学会
  認定内科医
日本消化器病学会
  消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会
  消化器内視鏡専門医・指導医
消化器内科医長
 中山 昇典
 北里大学医学部 平成8年卒
日本内科学会
  認定内科医
日本消化器病学会
  消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会
  消化器内視鏡専門医
日本臨床腫瘍学会
  がん薬物療法専門医
消化器内科医長
 西村 賢
 北里大学医学部 平成10年卒
日本内科学会
  認定内科医
日本消化器内視鏡学会
  消化器内視鏡専門医
消化器内科医長
 井口 靖弘
 横浜市立大学医学部 平成11年卒
 横浜市立大学大学院 平成17年修
日本内科学会
  総合内科専門医
日本消化器病学会
  消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会
  消化器内視鏡専門医・指導医
日本がん治療認定医機構
  がん治療認定医
消化器内科医師
 高畑 豪
 昭和大学医学部 平成21年卒
日本内科学会
  認定内科医
消化器内科医師
 芹沢 ありさ
 浜松医科大学 平成22年卒
日本内科学会
  認定内科医
消化器内科医師
 林 公博
 杏林大学 平成23年卒
 
消化器内科医師
 高橋 亮
 東海大学医学部 平成17年卒
日本外科学会 外科専門医
日本移植学会 移植認定医
厚生労働省 麻酔科標榜医
JATEC、SSTTプロバイダー

(更新日:2017.6.2)

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