診療科・各部門のご案内
免疫療法科

沿革

 がん免疫療法は50年以上前より非特異的免疫療法として行われてきました。1991年にベルギーのT. Boon博士らが生体内にがん細胞を特異的に攻撃する細胞傷害性T細胞(cytotoxic T Lymphocyte : CTL)が認識するがん抗原遺伝子を同定しました。さらにそのCTLが認識するヒト白血球抗原(human leukocyte antigen : HLA)上のがん抗原ペプチドを証明しました。これに端を発し、抗原特異的CTLを誘導可能ながん抗原ペプチドが数多く同定され、治療を目的としたがんペプチドワクチンの臨床試験が多数実施されるようになりました。当院におきましても各診療科で個別にワクチン投与を行って参りましたが、2014年4月1日から、正式に免疫療法を行う単独診療科として診療にあたることになりました。

がん免疫療法とは

 がん免疫療法は私たちの体に備わっている“異物を排除しようとする力”(免疫力)を増強することによって、がん細胞の増殖を抑える治療法です。がん患者が年々増加傾向にある中で、がん免疫療法は現在広く行われている外科療法、化学療法、放射線療法に続き患者への負担が少ない第4のがん治療として注目・期待されていますが、まだ標準治療としては確立されていないのが現状です。がん免疫療法がより有効であるのはがんの発症予防や再発予防であると考えられますが、一方で期待や需要がより大きいのは進行がん患者であり、そのどちらに対しても科学的根拠に基づいたがん免疫療法の開発が必要です。
 がんワクチン療法はワクチンにより免疫力を誘導・活性化するがん免疫療法の一つです。がんワクチン療法は、がん細胞に特異的もしくは正常細胞に比べて過剰に発現する遺伝子や蛋白質(がん抗原)、その断片であるペプチドを投与することで、生体内にがん細胞を特異的に攻撃するCTLを誘導して治療に利用する手法であり、新たながん治療法としてその有用性が期待されています。

がんペプチドワクチン療法の概略

 がんワクチン療法のひとつががんペプチドワクチン療法です。ワクチンとして接種するペプチドは、がん細胞に特異的なタンパク(がん抗原)由来の10前後のアミノ酸であり、抗原提示細胞(樹状細胞)を介してCTLを誘導します。誘導されたCTLががん細胞を傷害します。すなわち、ペプチド単独での薬理活性はなく、ヒトの有する免疫機構を利用することにより薬理活性を発現する治療法です。
 がんペプチドワクチン療法の概要は以下のとおりです。

  1. ペプチドを免疫増強剤(アジュバント)とともに接種する。
  2. 抗原提示細胞表面上のHLAにペプチドが結合し、抗原提示する。
  3. 抗原提示細胞上のHLA-ペプチド複合体を認識できるCD8陽性T細胞は、抗原特異的CTLとして活性化し、増殖する。
  4. 大量に増殖した抗原特異的CTLは血液を介して組織へ移動する。
  5. CTLはがん細胞上のHLAに結合したペプチドを認識しがん細胞を特異的に傷害する。

診療内容

 がんワクチンは、まだ薬として承認されたものはなく、承認のためには臨床試験・治験を通じて効果や副作用を検証しなければなりません。現在次に掲げる難治がんに対するがんワクチンの医師主導治験・臨床試験を6種類実施しています。

  • 進行・再発膵がんに対する医師主導治験 (平成28年3月31日登録終了)
  • 進行再発食道がんに対する臨床試験 (平成28年9月1日登録終了)
  • 切除不能進行膵がんに対する臨床試験
  • 再燃前立腺がんに対する先進医療B
  • 進行食道がん・大腸がんに対する医師主導治験 (平成28年9月1日登録終了)
  • 術後の肺がんに対する医師主導治験

 希望すればどの患者さんでも必ず臨床試験・治験に参加できるということではありません。ご参加いただくにはいくつか条件がございますので、必ず問い合わせ先にご連絡下さい。また治療開始時期や費用などにつきましてもワクチン毎に異なりますので問い合わせ先にご連絡下さい 今後実施する臨床試験・治験に関しましては実施する前に公表致します。

再燃前立腺がんに対する先進医療Bポスター(PDF)
参加募集 再燃前立腺がんに対する先進医療B

 適格性の確認(PDF)
適格性の確認

 

肺がん術後ペプチドワクチンの治験ポスター(PDF)
肺がん術後ペプチドワクチンの治験

 適格性の確認(PDF)
適格性の確認

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がんワクチンセンター登録状況

用語解説

がん免疫

 免疫は、ウイルスや細菌などに対する生体の防御反応として知られています。同時に、正常な細胞とは異なるがん細胞に対しても、免疫は異常な細胞を識別して死滅されることにより体を守る作用があると考えられております。一方、がん細胞には、正常細胞に比べて過剰に発現したり、がん細胞のみに発現する遺伝子や蛋白質があり、「がん抗原」と呼ばれています。免疫細胞は、がん抗原を目印としてがん細胞を識別し、がん細胞を死滅させます。

ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen : HLA)

 HLAは、ペプチドを載せることができるお皿のような形をもった分子であり、この分子の形は人によって異なり、A24型、A02型といったような遺伝子型によって規定されます。日本人の6割がA24型のHLA分子を有していることから、国内でのがんワクチンの臨床試験では、HLA A24型に対するがん抗原ペプチドが使用されることが多いです。

抗原提示細胞(樹状細胞)

 抗原に特異的なT細胞が活性化してキラーT細胞になるためには、抗原提示細胞と呼ばれる細胞によって刺激される必要があります。抗原提示細胞は抗原をペプチドに分解して、HLAクラスI、あるいはクラスIIに結合させて提示します。また、T細胞を活性させるのに必要な補助分子と呼ばれるものを発現しています。抗原提示細胞の中で、特に抗原を提示する能力が高い細胞は樹状細胞と呼ばれています。

臨床試験

 臨床試験とは広い意味で用いる言葉であり、目的は病気に対する新しい薬や治療・診断法の安全性や有効性を調べるために行う試験全般を言います。

治験

 薬事法に基づき、医薬品および医療機器等の製造販売に関する承認申請のための資料収集を目的として行われ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)への治験届提出を要する臨床試験のことです。

医師主導治験

 医師主導治験は、医師自らが治験を企画・立案し、治験計画届を提出して行う治験です。従来の治験は製薬企業の主導で行われてきましたが、平成15年の薬事法改正により、可能となりました。改正以前は、医薬品としては有望であっても、開発費用に見合うだけの市場性やリスク面が整わない場合には、製薬企業などが治験に乗り出せない場合がありました。このため、大学などの研究機関が、医療現場でニーズが高い医薬品や医療機器を研究開発した場合でも、企業にとって採算が取れない製品の開発は進みづらい状況にありました。医師自らが治験を実施することを制度上可能とすることで、企業のみでは臨床開発が進みづらい医薬品や医療機器でも、薬事承認取得を目指すことが可能となりました。

スタッフ紹介

診療医師名 認定資格
免疫療法科(がんワクチンセンター)部長
 笹田 哲朗
 京都大学医学部 昭和62年卒
 京都大学大学院 平成9年修
日本外科学会 外科認定医・専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医
日本消化器外科学会
 消化器がん外科治療認定医
免疫療法科(がんワクチンセンター)医長
 和田 聡
 群馬大学医学部 平成11年卒
 群馬大学大学院 平成17年修
日本外科学会 外科認定医・専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本消化管学会 胃腸科専門医・指導医

(更新日:2015.9.15)

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