診療科・各部門のご案内
血液内科

診療のご案内

 当科では血液の病気の中で、特に白血病・骨髄異形成症候群を担当しています。白血病には急性白血病と慢性白血病がありますが、基本的に急性白血病は入院治療、慢性白血病は外来治療を行います。初診の場合は、現在おかかりの施設の担当医あるいは患者さんご自身から医療相談支援室に電話連絡をしていただき、受診のご予約をとっていただきます。
 急性白血病の初発時は診断・治療に緊急を要しますので、多くの患者さんは直接入院になります。病名を聞いて、驚きと不安を抱えたまま慌しい入院になることも多いのですが、専門のスタッフが丁寧に説明を行いますのでご安心ください。また、当センターでは白血病治療専用の無菌病棟(30床)を備えており、治療環境でも高い評価を受けています。他院で治療を受けた後に、同種造血幹細胞移植を受けるために紹介される患者さんも多くいらっしゃいますが、移植の説明を十分に受け理解した上で転院されるように、外来受診時には当科で作成した「同種造血幹細胞移植のご案内」をもとに質問にお答えしています。同時に、ご兄弟などから骨髄(または末梢血幹細胞)を提供されるドナー(幹細胞の提供者)に対しても十分な理解が得られるように説明書を用意しています。
 医療の進歩にともない、一部の白血病では抗がん剤治療(化学療法)のみで治癒が得られるようになってきましたが、多くの白血病は根治療法としての造血幹細胞移植が必要です。病気を正しく理解していただき、それぞれの患者さんが最も適切な治療を適切な時期に受けられることがわれわれの願いです。患者さんやご家族とともに難病に立ち向かっていくことをスタッフ一同お約束します。

スタッフ紹介

診療医師名 認定資格
企画情報部長(兼)血液内科部長(兼)
輸血医療科部長
 金森 平和
 弘前大学医学部 昭和57年卒
日本内科学会 総合内科専門医・指導医
日本血液学会 血液専門医・指導医
日本輸血・細胞治療学会 認定医
日本感染症学会 ICD
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本造血細胞移植学会 造血細胞移植認定医
血液内科医長
 田中 正嗣
 横浜市立大学医学部 平成8年卒
 横浜市立大学大学院 平成14年修了
日本内科学会 総合内科専門医・指導医
日本血液学会 血液専門医・指導医
日本造血細胞移植学会 造血細胞移植認定医
日本感染症学会ICD
血液内科医長
 立花 崇孝
 横浜市立大学医学部 平成14年卒
日本内科学会 総合内科専門医・指導医
日本血液学会 血液専門医・指導医
日本造血細胞移植学会 造血細胞移植認定医
血液内科医師
 石山 泰史
 昭和大学医学部 平成22年卒
日本内科学会 認定内科医
日本血液学会 血液専門医
血液内科医師
 安藤 太基
 昭和大学医学部 平成24年卒
日本内科学会 認定内科医
日本血液学会 血液専門医

(更新日:2018.4.16)

当科の特色と治療成績

 急性白血病の治療(化学療法)は日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)で研究されている治療方法を基本にしています。しかしながら、化学療法のみでは根治が望めない患者さんもいますので、造血幹細胞移植を積極的に行い、白血病の治癒を目指した総合的治療を行っています。
 当科では1985年から2017年までに699人(生着不全や再発による再移植を含めると794回施行)に同種造血幹細胞移植を行っています。病気の内訳は急性白血病479人、骨髄異形成症候群87人、慢性骨髄性白血病68人、再生不良性貧血24人、骨髄増殖性疾患19人、悪性リンパ腫15人、その他7人です。当初は血縁者からの骨髄移植が中心でしたが、1992年~骨髄バンクドナーからの骨髄移植、1995年~血縁者からの末梢血幹細胞移植、2000年~臍帯血移植、2013年~骨髄バンクドナーからの末梢血幹細胞移植を導入しています。移植方法も一般的な骨髄破壊的前処置による移植の他に、2000年からは骨髄非破壊的前処置(強度減弱前処置)による移植を行い、高齢者患者が増加しています。さらに、2015年からはHLA半合致移植も臨床試験として行っています。移植の適応となる患者さんに最適の条件で移植を行うことを心がけ、質の高い造血幹細胞移植を提供することを目標にしています。
 以下、当科の中心的医療である同種造血幹細胞移植の成績を示します。移植成績は年々改善してきていますので、ここでは2009年~2017年に移植を行った急性白血病・骨髄異形成症候群の患者さんの生存割合を示します。移植成績に影響する主な要素として、患者さんの条件(年齢、病気の種類・進行具合、合併症の有無など)と移植片(造血幹細胞)の条件(HLAの一致度、ドナーの年齢・性別、移植細胞数など)があります。実際には、同じ病気であっても、これらの条件が絡み合って様々な状況下で移植が行われることになります。従って、比較する患者さんの条件を一定にすることが難しいために、移植成績の評価(あるいは他病院との比較)に際しては注意が必要であることをご理解の上、参考にしていただきたいと思います。また、移植後のQOL(日常生活・人生の質)も極めて重要なポイントですが、ここでは数値で表しやすい生存割合について、移植時病期、移植細胞、前処置強度、年齢別の解析結果を呈示させていただきます(従って一部の患者さんは重複して数えられています)。

図1.移植時病期(疾患リスク)別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

 急性骨髄性白血病150人、急性リンパ性白血病67人、その他の急性白血病9人、骨髄異形成症候群48人の治療成績(5年生存割合)を移植時の疾患リスク(主として移植後再発の危険性を予測する指標になり、標準リスクは急性白血病の第一寛解期移植、骨髄異形成症候群では不応性貧血や寛解期を含み、高リスクは第二寛解期以降や非寛解期移植を含みます)別に示します。274人のうち標準リスクは171人、高リスクは103人でした。標準リスク群の5年生存割合は64%、高リスク群の5年生割合は27%で統計学的に明らかな違いがあります。このことから寛解期に移植を受けることが白血病の治癒を得るために重要であることがわかります。なお、274人の年齢中央値は52歳(18~69歳)、男性165人、女性109人でした。移植方法は骨髄破壊的前処置が114人、骨髄非破壊的前処置が160人に用いられています。

図1.移植時病期(疾患リスク)別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

図2.移植幹細胞別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

 次に幹細胞別の移植成績を標準リスク(寛解期、不応性貧血)および高リスク(その他の病期)に分けて示します。5年生存割合は、いずれも臍帯血移植の成績が良いですが、統計学的有意差はありません。当科の幹細胞選択の順番は、1)血縁ドナー、2)すでに地固め療法が終わっている寛解期急性白血病や逆に病気の進行が早くて時間的余裕がない場合は臍帯血、3)3~4ヶ月待てる状況であれば骨髄バンクドナー、という大まかな基準に基づいています。

図2.移植幹細胞別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

図3.前処置強度別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

 骨髄非破壊的移植として通常の移植前処置とは異なる治療を行っていますが、当科の治療はいわゆるミニ移植よりは強く、むしろ骨髄破壊的移植に近い治療に位置づけています(フルダラビンとメルファランという薬を用いる方法を強度減弱前処置として使用しています)。前処置の強度別では、標準リスクも高リスクも有意差はありませんが、骨髄破壊的前処置(114人)の年齢中央値が40歳(18-56歳)であるのに対し、強度減弱前処置(160人)の年齢中央値は60歳(19-69歳)と明らかな差がみられています。

図3.前処置強度別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

図4.年齢別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

 今回の検討では274人中85人が60歳以上の患者さんでした(約30%)。この移植成績からは、単純に年齢で移植適応の可否を決めることが難しいことを示しています。当科では移植適応年齢の目安として70歳を考えていますが、患者さんによっては歴年齢よりも身体年齢が若くみえる方もいます(もちろん、その逆もありますが)。できる限り、患者さんや家族の希望を受け入れたいと考えていますので、移植の相談をされたい場合には通常の外来やセカンドオピニオン外来を利用していただければ幸いです。

図4.年齢別:急性白血病・骨髄異形成症候群の移植成績(2009-2017年)

白血病治療や造血幹細胞移植に関する情報サイト(外部リンク)

白血病とは

 白血病は血液成分のひとつである白血球がある成熟段階でがん化した病気です。大きく急性白血病と慢性白血病に分類され、がん化した細胞の種類によって、骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けることができます。これらの白血球は骨髄(骨の中にあり、血液の工場にたとえられます)の造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)から各細胞に分化して、さらに感染を防ぐのに役立つ細胞に成熟し血液中に流れて来ます。従って、骨髄中のどの種類の白血球がどの成熟段階でがん化したかによって、下記のように白血病は分類されます。

急性白血病

  1. 急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia: AML)
  2. 急性リンパ性白血病(Acute lymphoblastic leukemia: ALL)

慢性白血病

  1. 慢性骨髄性白血病(Chronic myelogenous leukemia: CML)
  2. 慢性リンパ性白血病

 骨髄異形成症候群も白血病の仲間ですが、造血幹細胞レベルでの異常が原因と考えられること、多くは血液細胞の数が減少すること、正常な働きをする血液細胞(白血球、赤血球、血小板)が造られないことが特徴です。高齢者に多くみられ、造血の老化現象とも考えられます。

白血病の原因

 白血病と診断されると必ず「なぜ白血病になったのか」という疑問がわきます。まだ十分に明らかにされていませんが、他のがんと同様にいくつかの遺伝子異常が関係していることがわかっています。また、放射線や化学物質、抗がん剤も発症の要因になる場合があります。ウイルスも原因のひとつと考えられていて、HTLV-1というウイルスは九州や四国に多くみられる成人T細胞性白血病/リンパ腫の原因になります。しかし感染者の一部が発症するだけで、多くの人は白血病/リンパ腫を発病しないこともわかっています。「白血病は子供に遺伝するのか」という質問も多く聞かれますが、通常は遺伝や伝染するものではありません。

白血病の症状

急性白血病

 正常な血液細胞が造れなくなるため、赤血球減少による貧血、正常白血球減少による感染症の合併、血小板減少による出血傾向(皮膚の紫斑や点状出血、鼻出血、歯肉出血、不正性器出血など)が起こることがあります。また、白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤すると浸潤した臓器の異常(肝障害や中枢神経障害など)が起こります。

骨髄異形成症候群

 急性白血病と同様な症状が起こります。場合によっては年の単位で進行するために症状を自覚しないこともあります。正常の血液が造れない(造血不全状態)だけでなく白血病への進行も一定の割合で起こります。

慢性白血病

 多くの患者さんは健康診断で病気を指摘されることが多くなっています。慢性期では自覚症状はあまりありませんが、進行すると急性白血病と同様な症状がみられることがあります。

白血病の診断に必要な検査

【血液検査】

  1. 血球検査(貧血の有無、白血球数とその分類、止血に関与する血小板数など)
  2. 生化学検査(栄養状態、肝・腎機能など)
  3. 血清検査(炎症反応、感染症の有無など)
  4. 凝固検査(出血傾向に関係する凝固因子など)
  5. 血液型(輸血を行う場合が多いため)

【骨髄検査】

 通常の血液検査に加えて骨髄検査が必須です。骨髄の中に白血病細胞がいっぱいになったり、繊維成分に置き換わったりしていると骨髄液が採取できないこともありますが、多くの場合は骨髄穿刺という方法によって骨髄液の採取が可能です。成人では長管骨(手足の太い骨)では造血がないため、体幹部の骨から採取を行います。通常は骨盤の骨(おしりに位置する後腸骨という平たい骨)から局所麻酔後に骨髄穿刺針(ボールペンの芯程度の太さの金属針)を刺し、骨髄液(2~3ml)を吸引します。吸引時には陰圧がかかるため痛みがありますが、外来でもできる比較的簡単な検査です。骨髄液を使って、形態検査、染色体検査、遺伝子検査などを行い、白血病の的確な診断に基づいて適切な治療方法が決定されます。

【その他】

 全身状態の評価のため、レントゲン検査、心電図、超音波検査などが行われます。また、白血病がリンパ腺や内臓に広がっていないかどうか確認が必要な場合には髄液検査(骨髄ではなく脳脊髄液の検査)、CT検査、MRI検査などを行います。

検体の保存

 当センターでは血液や骨髄液の一部を保存することをお願いしています。将来、新たな検査方法や白血病に関連する遺伝子異常など発見された時に、多数の患者さんから保存された検体を調べることによって、病気の原因を解明する糸口になる可能性があります。個々の患者さんの個人情報はわからないような形で「検体保存」が行われますが、あくまでも患者さんの自主的なご協力ですので、担当医から説明があった時にご検討をお願いしています。

白血病の治療(治療-図1)

1)急性白血病の治療

化学療法(図2)

 白血病細胞を殺し、その増殖を抑えるために抗がん剤が投与されます。通常、複数の抗がん剤を同時に使用します(併用化学療法)。急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病では用いる抗がん剤の組み合わせが異なっているため、発病時の正確な診断が重要になります。

分子標的療法

 一部の白血病では白血病のみに作用する分子標的薬が併用されます。例えば、急性前骨髄球性白血病にはレチノイン酸(ビタミンAの一種)、フィラデルフィア陽性急性リンパ性白血病にはイマチニブという薬が併用されます。また、骨髄性白血病の一部では白血病細胞に特異的に反応する抗体療法(ゲムツズマブオゾガマイシン)も行われています。

造血幹細胞移植(図3)

 患者さん自身の造血幹細胞を使う自家移植と他人の造血幹細胞を使う同種移植がありますが、白血病の治療には一般的に同種造血幹細胞移植が行なわれます。残存している白血病をさらに減らすことと他人の造血幹細胞が受け入れられるように造血・免疫機能を低下させることを目的として大量の抗がん剤や全身放射線照射を行います(移植前処置と呼びます)。その後、正常な造血幹細胞(骨髄、末梢血、臍帯血のいずれかを使用)を移植して、造血・免疫機能を回復させる治療法です。強力な治療のため、強い前処置を用いる移植(骨髄破壊的移植)は50~55歳まで、弱め目の前処置を用いる移植(骨髄非破壊的移植)は65~70歳くらいまでが適応になります。移植後はさまざまな合併症(細菌・真菌・ウイルス感染症、GVHDと呼ばれる免疫反応、重要な臓器の機能低下など)が起こる場合もあり、これらの一部は命に関わることもあります。従って、移植治療の適応と移植時期を慎重に検討することが大切です。

放射線療法

 白血病が局所に浸潤した場合には、他のがんと同じように放射線治療が適応になる場合があります。

支持療法

 急性白血病の治療では、感染症の予防・治療が大変重要です。死亡原因の多くは肺炎・敗血症などの感染症ですので、これらの早期発見・早期治療が必要です。また、正常の造血が行われない間は赤血球や血小板などの輸血療法が必須です。

図1 白血病の治療

図2 急性白血病の化学療法

図3 同種造血幹細胞移植

2)骨髄異形成症候群の治療

化学療法

 白血病への移行・進行がみられる場合に、急性骨髄性白血病に準じた化学療法を行います。骨髄異形成症候群は造血幹細胞レベルの異常が原因のため、化学療法では治癒で得られませんが、一時的に輸血からの離脱が得られる場合があります。また、新規の抗がん剤(アザシチジンなど)の効果も期待されています。

造血幹細胞移植

 唯一の根治的治療方法ですが、骨髄異形成症候群は高齢者に多く発症するために、適応となる患者さんは限られます。造血不全が主体で白血病細胞が少ない場合には、化学療法を行わずに直接移植を行なう場合もあります。

その他の治療

 一部のタイプには免疫抑制剤、ビタミンK、ビタミンD、ホルモン剤(ステロイド、タンパク同化ホルモン)が使用される場合もあります。

支持療法

 通常の化学療法や造血幹細胞移植を行い難い患者さんでは、輸血療法が中心になります。赤血球や血小板輸血の頻度は患者さんによって様々ですが、外来通院によって普通の生活を送ることも可能です。

3)慢性骨髄性白血病の治療

 慢性白血病のうち慢性骨髄性白血病の治療について説明します。慢性骨髄性白血病の病期には慢性期、移行期、急性転化期に分類されます。慢性期の治療の第一選択薬はイマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブのいずれかになります。白血病細胞の中で起こっている異常を特異的に阻止する効果があり、長期的に安定した状態を得ることが可能です。長期の服用により徐々に白血病細胞は消失しますが、治療を中断すると再発することが多いことも知られています。副作用はそれぞれの薬によって特徴がありますので、担当医と相談して治療薬を選択することも重要です。上記の薬剤に耐性(薬が効きにくい状態)の白血病細胞が増えてきた場合には、薬剤の増量や他剤(ポナチニブなど)への変更を考慮します。しかし、どの薬でも効果が十分得られないような場合は造血幹細胞移植の適応になります。移行期や急性転化期にはイマチニブや化学療法では十分な効果が得られない場合が多いため、造血幹細胞移植を考慮します。イマチニブ治療や同種造血幹細胞移植が行えない場合には、インターフェロンαやハイドロキシウレアなどの治療を行う場合もあります。

医療費について

 白血病の治療では医療費が高額になることが多いため、院内のケースワーカーに相談されることをお勧めします。入院・通院にかかわらず、高額療法費制度を活用していただき、安心して十分な治療を受けていただきたいと思います。

  • 節電のご協力ありがとうございました
  • No Smoking
  • がんセンター外観